メティ

アラーニェ放浪記

アラーニェ

ここはどこなのじゃ?

メティ

さて、この番組もこれで放送第4回!
つまり、今回がわたくしたちの最後の旅になるわ

アラーニェ

…………

メティ

あら、どうしたのかしら?

アラーニェ

いやじゃ

メティ

は?

アラーニェ

いやじゃいやじゃ!
妾はもうこんな番組なんぞ、出とうない!

メティ

そうね……わたくしも前回の出来事で骨身にしみたわ
世の中、おいしい話なんてないってことをね

アラーニェ

そうじゃっ!
妾ももう我慢ならん!
せっかくの妾の冠番組……いいことなんぞ、一つもないぞ!

メティ

古い城で黄金の指輪を手に入れたと思ったのに、亡者どもに邪魔されて……

アラーニェ

そうじゃ!
まぁ、面白い鎧に会い、亡者どもを言いなりさせたがのう

メティ

真っ暗な洞窟の中で、金貨の元である金鉱を見つけたのに掘れずじまい

アラーニェ

………世にも美しい花が日に当たる様は見たがの

メティ

挙句、金銀銅貨が転がる夢のような世界が本当に幻だったし!

アラーニェ

妾も浴びるように酒を飲めたはずじゃったが…………
まぁ、おぬしのどんぐり拾いは笑えたのう

メティ

いいことなんて何一つなかったわ!

アラーニェ

まったくじゃ!

メティ

いえ、待ちなさい………
貴女、わたくしよりもマシじゃないかしら?

アラーニェ

そんなこと、妾はしらん!
つまらんもんはつまらん!

メティ

このタイミングでなんだけど、この番組は、転送石の座標を曖昧に設定し、ゲストの希望が満たされる場所に飛んでしまおうという旅番組なの

メティ

そして、アラーニェさんかゲストのどちらかが満足するまで帰れない縛りつきになっているわ

アラーニェ

………急にどうしたんじゃ、メティ?

メティ

だから、最初にこのタイミングでなんだけどって言ったじゃない

メティ

わたくしが言いたいのは、貴女かゲストが満足するまで帰れないってことよ

アラーニェ

それがどうしたんじゃ?
今更、確認することでもあるまい

メティ

今こうして、帰ってきているってことは、少なくとも貴女かゲストが満足したってことでしょう!?

アラーニェ

ふむ、まぁ、そういうことになるかのう

メティ

だったら、貴女もそこそこ満足してるってことじゃない!

アラーニェ

これは転送石が決めたこと、妾はしらん

メティ

なによ、毎回、ちゃっかり楽しんでる癖に……

アラーニェ

何か言ったかの?

メティ

いえ、なにも

メティ

それより、最終回はどうするのかしら?

アラーニェ

うむ、二度あることは三度あるというが、四度あるとは聞かんし………
だめで元々、行くしかないあるまい

アラーニェ

じゃが、せめて、最後は騒がしく行きたいもんじゃ……

メティ

と思って、わたくしも最高の賑やかしをゲストに呼んだわ

アラーニェ

む、賑やかし……?

メティ

最後を飾るゲストはこの方よ、どうぞ!

パチパチパチ

ライムS

へっへーんっ! 最後のゲストはあたし!
笑いあるところにむーちゃんありっ!
ライム=S=デーン参上よっ!!

アラーニェ

おおっ!
ライムか、最後にふさわしいゲストじゃな!

ライムS

にへへへへ、でしょでしょ!
アラーニェが何か困ってるって聞いたから、あたしが盛り上げにきたよ!

アラーニェ

それは助かるんじゃが、良いことなんぞない

ライムS

だいじょぶだいじょぶっ!
だってこのあたしが来たんだから、何の問題もないってっ!

メティ

それで、ライムさんはどこに行きたいのかしら?

ライムS

あたしはね~
むふふっ、お宝がたくさんあるとこ

メティ

前回までのわたくしなら二つ返事で許可したと思うけど……
今回はそんな無茶苦茶な場所に行きたくないわ

ライムS

なに?
そんなに大変だったの?

アラーニェ

この守銭奴がどんぐりを集めるくらいには大変じゃったな

ライムS

えぇぇ!?
メティって、そんなにどんぐりが好きなの!?

ライムS

子どもっぽい

メティ

好きじゃないわよ!
お金だと思って集めてただけじゃない!

ライムS

えっと………
つまり、アラーニェたちはどんぐりがお金のところに遊びに行ったってこと?

アラーニェ

当たらずともいえども遠からずってところじゃ

メティ

遠すぎるわ!

ライムS

ところで、アラーニェはどこ行きたいの?

アラーニェ

どうせ、行きたいと願ったところで無駄じゃ
がっかりして終了……いいことなんぞない

ライムS

なに言ってんのさ
行きたいとこ言わないと、そもそもどこも行けないじゃん

メティ

そうね、願うのは無料ただ
単に叶えるのにお金が掛かるだけ

アラーニェ

そうじゃな、願うだけで期待せんかったらええんじゃ……
仕方あるまい、妾の願いは温泉に入って酒を飲む、それが妾の願いじゃ

ライムS

んじゃ、それで決定っ!
アラーニェ、さっそく、祝詞詠んでちょうだい

アラーニェ

わかった、待っておれ

メティ

さて、今回はどんな霧に包まれるのやら……

アラーニェ

湯の花が 浸かりし酒を 盃に さるべく時も 石のまにまに





アラーニェ

はぁー……ここは、どこじゃ

メティ

やつれた感じで言わないでくれるかしら?

アラーニェ

仕方ないじゃろ、どこだろうと期待できんのじゃから

アラーニェ

それにほれ、ここもどこぞの山奥
………温泉があるわけなかろう

ライムS

大丈夫だって!
このむーちゃんにかかれば、温泉の一つや二つすぐ見つけちゃうよ!

メティ

なにを持ってその自信があるのか、興味があるわ

ライムS

ほわーーーい!

メティ

うっさいわね、急に奇声上げないくれるかしら?

ライムS

見てよ、あれ!
ほらほら、ふたりとも!
あれ、どう見ても湯気だよね、湯気っ!

アラーニェ

おおっ!
本当じゃな!

ライムS

でしょでしょ!
むふふっ、あたしってば、何でも見つけちゃうちょー天才かもしんないねっ!

メティ

そのセリフは、金貨を拾ってから言いなさい!

ライムS

ふぇ?
あたし、金貨拾ったことあるよ!
しかも、2枚!

メティ

1枚は知ってるけど………
2枚もあるなんて

アラーニェ

確かに湯気がたっておるが、あれじゃ、溶岩ってオチじゃろ

メティ

いえ、幻術よ、幻術なのよ

ライムS

とにかく行ってから考えればいいじゃん!
ほらほら、あたしひとりで言っちゃうよ!

アラーニェ

むむ………
そうじゃな、駄目で元々、無理だと思っておれば落胆することもあるまい

メティ

それが既に期待しているってことよ

アラーニェ

確かにそうじゃな………
どんな裏があるかもわからんし

ライムS

あたしひとりで行っちゃうけど、本当にいいの!?

メティ&アラーニェ

いい

ライムS

ほんとにいいの!?

メティ&アラーニェ

いい

ライムS

ほんとにほんと!?

メティ

いい
…………あら?

アラーニェ

仕方あるまい、溶岩じゃってもライムとなら愉快なこともあるじゃろ

メティ

分かったわ
溶岩に溶けるスライムの映像をお願いするわね

ライムS

ひどっ!!




ライムS

見て見て! ほらね、やっぱり温泉だったじゃん!
むふふっ、さっすがはあたし、神様に惚れられてるね、きっと!

アラーニェ

………確かに湯気は出るようじゃが、生物が入っていいとは限らんぞ

メティ

入ったらみんな溶けてスライムになるわ

ライムS

だいじょぶだいじょぶ!
近づいてもそんな熱くないし

メティ

だったら、お湯の中に手を入れてみなさい!

ライムS

う、うん、いいよ…………い、いくよ……

アラーニェ

ちゃんと指先だけにするんじゃぞ!

ライムS

むっ!

メティ

あら、溶けたのかしら?

ライムS

なにこれ!? すっごく良い感じっ!
熱すぎず、ぬる過ぎない、まさに適温だねっ!

メティ

…………どうせ、スライムが入れる特別な温泉なんでしょう?

アラーニェ

そうじゃな、十分にありえる

ライムS

あれ、あそこにいるの猿だよね?
ってことは、普通に入れるんじゃん!

アラーニェ

この山の猿が入れるだけかもしれん

メティ

違うわ、あの猿がスライムなだけよ

メティ

第一、こんなタイミングよく猿が現れるなんて怪しいわ…………
本当に現実かしら

ライムS

いいもん、いいもん!
あたしひとりで入っちゃうから

アラーニェ

仕方あるまい
………四度目の正直じゃ、妾も入る

メティ

こんなとこで脱―――
あら、急に湯気が濃くなって、ふたりの顔しか見えないわ



シュルシュル

ライムS

よぅし、一番乗りっ!
うはっ、すっごく良い湯

アラーニェ

おおっ!
本当じゃ、これはなかなか

メティ

こんな都合のいいことがあるわけないわ

メティ

幻術よ、また幻術なのよ

アラーニェ

うむ、これで酒があったら何も文句はないのう

ライムS

ん?
お酒………わかった、ちょっと待ってて、あたしが探してくる!

メティ

探したって見つかるわけないわ

アラーニェ

行ってしもうた………まぁ、ライムなら見つけるかもしれん

メティ

そんな奇跡―――

ライムL

見つかるものね

アラーニェ

おおっ、いつの間におぬしに変わったんじゃ?

ライムL

うふふっ、番組的にはセクシーな方がいいでしょ?

メティ

どのみち、湯気で顔しか見えないわ

アラーニェ

それで、見つかったとは、まさか……

ライムL

ええ、さっきのお猿さんがくれたの
さっそく、飲みましょう

アラーニェ

にわかには信じがたいが……
うむ、この酒で酔えたのなら本物じゃ!

ライムL

それじゃ、お猪口も借りてきたから乾杯と行きましょうか

アラーニェ

ふっふっふっ、そうじゃな!

メティ

こ、こんなうまい話があるわけないわ!
幻術よ、また幻術なのよ!

ライムL

それじゃ、番組の最後を祝って、かんぱーいっ!

アラーニェ

どれ、どんな味がするのかのう………
むっ!

メティ

あぁ、毒ってオチね

アラーニェ

美味い!
なんじゃ、この酒は!

ライムL

うふふっ、お猿さんいわく、『さるすべり』っていうお酒らいしわ

アラーニェ

これは『純米吟醸 夢の通い路』に匹敵する味じゃ!

ライムL

どう、来てよかったかしら?

アラーニェ

うむ! 最高じゃ!

ライムL

メティも入らない?

メティ

いいえ、わたくしは騙されないわ!
幻術よ、また幻術なのよ!

アラーニェ

しっかり酔えとるようじゃし、これで幻術じゃとしても文句はないのう

ライムL

うふふっ、それじゃ、帰るまでゆっくりしましょう

アラーニェ

そうじゃな

メティ

………絶対、現実なわけないわ
ここもただの水溜りなのよ





アラーニェ

さて、うまい酒も飲めたことじゃし、そろそろ出ようかのう

ライムL

そうね、あら?

ブブブッ

アラーニェ

転送石が

シューン





メティ

ここはどこかしら?

アラーニェ

スタジオじゃな

ライムL

アラーニェが満足したから帰ってこれたんでしょう?
ご丁寧に服まで着せてくれてるわね

メティ

つまりこれって

アラーニェ

良い旅じゃったな

ライムL

そうね

メティ

…………

アラーニェ

おお、メティが固まっておる

ライムL

うふふっ、現実に打ち負かされたのね

メティ

…………

アラーニェ

放っておくか

ライムL

それがいいわ

アラーニェ

では、また会おう、さらばじゃ!

ライムL

またね

メティ

…………

番組終了

楽屋
『猿?』

アラーニェ

それで、あの温泉に入っておった猿は何ものだったんじゃ?

メティ

…………

ライムL

さぁ、わからないわ……ただ、白いひげを生やした年寄りの猿だったわ

アラーニェ

白いひげを生やした猿じゃと?
もしや、仙―――

メティ

アラーニェ放浪記

アラーニェ

『ここはどこなのじゃ?』

メティ

さて、いよいよこの番組も第3回目となったわ
わたくしはお馴染み司会者兼ナレーション兼プロデューサーのメティ=エリファスよ

メティ

さて、この番組はアラーニェさんの転送石の目的座標を曖昧に設定し、ゲストの希望が満たされる場所に飛んで旅する新感覚旅行番組です

メティ

なお、アラーニェさんかゲストのどちらかが満足するまで帰れない縛りつきとなっているわ

メティ

そして、この番組のメインを務めるのは―――

アラーニェ

…………アラーニェ

メティ

あ、アラーニェさん、自己紹介くらいちゃんとやりなさい!
せめて、『じゃ』ぐらい付けたらどうかしら!

アラーニェ

……つまらん………つまらんぞ!

メティ

つまらなくないわ!
この番組も過酷な旅番組として、スポンサーも大喜びしてるもの!
評判上場よ

アラーニェ

そんなこと妾はどうでもよい!
酒が飲めん、風呂に入れん、良い景色は……あったが、つまらんもんはつまらん!

メティ

知らないわよ、そんなこと!
そもそもの問題はわたくしじゃなくて、貴女の転送石じゃない!

アラーニェ

なんじゃ、その態度は………
わかった、メティがそういう態度というのなら妾にも考えがあるぞ

メティ

あら、どんな考えだろうと構わないけど、この契約書の前には無力だわ

アラーニェ

ええい、そんなことどうでもよい!
妾は今回、酒と風呂にありつけんかったら、この番組を降りる!

メティ

な!? 何言ってのかしら!?
そんなもの、ただの我がままでしょう!
それに契約書も切れてないわよ!

メティ

契約書の規則『丙の都合で番組を降りる場合、丙は状況に応じて罰則金を負担する』に基づいて罰金を払っていただくわ!

アラーニェ

ぐ………なら、出演はするが、妾はやる気は見せんぞ!

メティ

いいのかしら?
ふふ、出演料が安くなるわよ?

アラーニェ

もうこの際、目を瞑る………
こんなつまらん番組で張り切って馬鹿を見るくらいなら、それも覚悟の上じゃ

メティ

一体、どうしたのかしら?
前回も放送終了後はご機嫌だったじゃない?

アラーニェ

………他の番組と比べたら、妾の番組は明らかにつまらん

アラーニェ

スィークはごちそうを食べ、ラキスは自由きままに説教し、ライムは遊び回り、アルルは実験、レイミアは遊戯、ルピュアは掃除……

アラーニェ

なのに、なぜ、妾の番組はこのように過酷なんじゃ!?
妾はいい旅を夢気分で味わいたいんじゃ!

メティ

いろいろツッコミたいけど……これだけは言わせてくれるかしら?

メティ

最後は明らかにつまらないわ!

アラーニェ

ルピュアは好きなことをやっておるのじゃから、問題なかろう

メティ

なにを言うかと思えば、そういうの、隣の財布は太く見えるってやつでしょう?

アラーニェ

それを言うなら、隣の花は赤いじゃ!
それに、実際に隣の花の方が赤いんじゃから、妾が怒るのも無理ない

メティ

はぁ……
もういいわ、アラーニェさんは、この方に止めてもらいましょう……どうぞ

パチパチパチ

スィーク

こんにちはなの、スィーク=オトカネなの

メティ

スィークさん、あのお姫様の暴走を止めてくれるかしら?

スィーク

ほっとけばいいの、あれは姫の発作みたいなものなの
巻き込まれたら最後、面倒なのことになるの

アラーニェ

なんじゃ!
自分は言いものばっかり食しておるくせに!

スィーク

スィークはスィークで苦労の連続だったの………

メティ

この番組に比べたら、スィークさんの番組なんて、まだちゃんとグルメ番組をやれてるわ

スィーク

知っているの、だからスィークはこの番組に出たくなかったの

メティ

………旅先でおいしいものを食べられるかもしれないわよ

スィーク

こっちはちゃんと番組を見たの
それにアルルとルピュアからも話を聞いたの………
ふたりとも悲惨な目にしか合ってないの

アラーニェ

妾は、その2回とも出演しておるんじゃぞ!

メティ

こ、今回は違うかもしれないでしょう

スィーク

2度あることは3度あるものなの………
期待するだけ無駄なの

アラーニェ

今回も酒にも風呂にもありつけんかったら、番組になんぞ出る意味なしじゃ

メティ

はぁ………
とりあえず、どこに行きたいかいいなさい、話はそこからよ

スィーク

食べ放題にいきたいの

アラーニェ

飲み放題にいきたいのぅ

メティ

稼ぎ放題にいきたいわね、おーほっほっほ!

スィーク

でも、そんな都合のいい場所があるわけないの
それはまるで夢の国なの

アラーニェ

世界は広いからのう、桃源郷ぐらいあってもおかしくはないんじゃが………
まったくもって期待できん

メティ

わたくしは番組が面白ければそれでいいわ!
視聴率が良ければわたくしのもとにお金は転がり込んでくるもの!

アラーニェ

さて、どうかの

メティ

それじゃ、行くわよ!

アラーニェ

…………

メティ

さっさと詠みなさい

アラーニェ

詠みたいのはやまやまじゃが………
前回の花の歌が頭から離れんのじゃ

メティ

………奇遇ね、わたくしも『陽、陽』が忘れらないわ

スィーク

どうでもいいの、さっさと祝詞を詠むの

アラーニェ

急かすでない……ふぅ

アラーニェ

食べ放題 稼ぎ放題 飲み放題 愉快痛快 石のまにまに




アラーニェ

……ここはどこなのじゃ

メティ

祝詞、適当すぎないかしら?

スィーク

それどころじゃないの、霧が濃くて何も見えないの

メティ

洞窟の次は霧?
カメラにちゃんと映るといいんだけど

アラーニェ

そんな柔な撮影用魔導具カメラではないはずじゃが………
おおっ、どうやら霧は晴れてきたようじゃな

メティ

………あら!?

スィーク

…………お、驚きなの

アラーニェ

な、なんじゃここは!

スィーク

た、炊き立てご飯のお城なの!

アラーニェ

あの滝から美味そうな酒の匂いがしておるの!

メティ

ぎ、銀貨が落ちてるわ!
あ、こっちに銅貨………
金貨もあるわっ!!

メティ

持ち主は………ふふ、居なさそうね
まぁ、居てもカバンに入ればわたくしのものよ、おーほっほっほっほ!

スィーク

これはもう、突撃するしかないの!




ナレーション

霧が晴れ、我々の目の前に広がるのは、ご飯で出来たお城、お酒の匂いがする滝………

ナレーション

そして、いたるところに金銀銅貨が転がる、まさに夢のような世界




アラーニェ

ふむ!
素晴らしい、なんと美味い酒じゃ!
じゃが、この酒どこかで………

アラーニェ

そうじゃ、ヒビキの世界の酒『純米吟醸 夢の通い路』と同じ味ではないかっ!
まさか、こんなところで飲めるとはの!

メティ

あ、また銀貨!
こっちは金貨!!
あら、銅貨も落ちてるわね………当然、拾うけど

スィーク

もぐもぐ……これはなかなか美味しいお米なの
ふふ、噛んでも噛んでもお口の中で甘い味が広がるの

アラーニェ

ごく、んー、美味いの!
今日は口喧しいのがおらんし、キューテにだらしないところも見せんで済むし、最高じゃな

メティ

ふふ、銀貨、あら、金貨も!
く………銅貨は、見捨てるしか……いや、拾うわ

スィーク

すごいの、スィークが丸焼きが食べたくなれば、お米のお城から丸焼きが出てくるの!

アラーニェ

ふふっ、飲んでも飲んでも今日はまったく酔わんぞ

メティ

あら、お金の預かり所まであるわ…………もちろん、預けないけど

スィーク

夢のようなの、ここは夢の国なの

アラーニェ

む?
なんじゃ、おぬしは……ほぅ、ねずみのきぐるみか……
なに、妾に余興を見せてくれるのか!
ふふ、それは楽しみじゃな

メティ

あら、ここ、住民もいるのね
え、お金を貸してほしい……一秒、一割?
今すぐ、貸すわ! おーほっほっほ!

メティ

この借用書にサインなさい……あら、判子も用意してあるの?
ずいぶん、用意がいいわね

スィーク

……おかしいの……食べても食べてもお腹が膨れないの

アラーニェ

なに、いつものことじゃろ?
……じゃが、たしかに飲んでも飲んでも酔わんの

メティ

おかしいわね……お金を拾っても、お金を貸しても、カバンが軽くも重くもならないわ……

メティ

まぁ、金貨の山があるから、入れる必要なんてないわね!
ふふっ、おーほっほっほっほ!

アラーニェ

………あっ、しもうた!
妾としたことが、うかつじゃった

スィーク

どうしたの、姫?

アラーニェ

恐らく、さっきの霧はまだ晴れておらん

スィーク

ちょっと意味がわからないの

アラーニェ

あの霧には、自分の理想を幻として見せる催眠効果があるようじゃ

スィーク

魔法みたいなものなの?

アラーニェ

少し違うようじゃ………
ただ、ここにいるもの皆が同じ光景みているようじゃから集団催眠に陥っているのは確かじゃな

スィーク

……スィークたちは、かすみを食べていたってことなの?

アラーニェ

美味い美味いと言いながらのう……

スィーク

カメラにはどう映ってるの?

アラーニェ

安心してよい、
あの撮影用魔導具カメラは優秀じゃ、優秀すぎてこの幻想世界も映しておるはずじゃ

スィーク

ほっ……よかったの
これで、お茶の間に、スィークたちの滑稽な姿が映らなくて済んだの

アラーニェ

しかし、どうやってこの幻想から出たものか……

スィーク

霧の外に出ればすぐなの

アラーニェ

こういう場合は方向感覚もずれておる、まっすぐ歩いておるようじゃが、歩けておらん

スィーク

じゃあ、姫の魔法でなんとかするの

アラーニェ

妾の魔法なんぞ、使わんでも脱出は可能じゃ
ここが欲望の世界なら欲を捨ててしまえばよい

スィーク

食欲を我慢するなんて、耐えられないの

アラーニェ

与えられたものを拒否し続ければ現実に帰れるはずじゃ
ほれ、『すたっふ』も妾の言う通りにせい!

スィーク

……味も匂いもするの、我慢するなんてとても難しいの

アラーニェ

ならば、ここにはないものを欲すればいい………
あるじゃろ、一つ、ここでは決して手に入らぬものが

スィーク

……ここにないもの…………ふふ、わかったの
ヒビキのことを思うぐらい、朝飯前なの

アラーニェ

そういうことじゃ……ゆくぞ

スィーク

………………

アラーニェ

……………

アラーニェ

ふむ、どうやら、抜けたようじゃな

スィーク

………霧が薄れてるの……ここはただの森みたいなの

メティ

あら、金貨がまだまだ落ちてるわ!
ふふ、これだけ金貨があれば、もう銅貨なんて拾わないでいいわね

メティ

く、体が勝手に銅貨を拾う……

スィーク

……メティが楽しそうにどんぐりを集めてるの

メティ

見なさい、愚民ども!
この契約書がある限り、わたくしにお金を払い続けるのよ!

アラーニェ

枯葉を集めてなにを笑っておるんじゃ

メティ

おーほっほっほ!
このお金できた城は全てわたくしのものよ!

スィーク

なんだか、すごく楽しそうなの

アラーニェ

あははははっ! 阿呆じゃな

ブブブッ

アラーニェ

おっ、転送石が……!

シュ-ン!





アラーニェ

ふむ、どうやら帰ってきたようじゃ

スィーク

ただいまなの

メティ

きゃあああああああああああっ!!

メティ

ない、ない、ない!
わたくしの金銀銅貨が、ないっ!!

メティ

どこにいったのよっ!
わたくしのお金と借用書の山は!
あと、これはなによ!!

スィーク

どんぐりなの

アラーニェ

枯葉じゃ

メティ

見ればわかるわよ!

アラーニェ

ふっふっふ、まんまと化かされたのう

スィーク

メティ、諦めるの
全ては夢幻のごとしなの

メティ

諦められるわけないでしょう!
わたくしのお金がないのよっ!!

スィーク

最初に自分でなんて言ってたか思い出して欲しいの

アラーニェ

そういえば、視聴率がよければ他はよいと言っておったじゃろ?

メティ

視聴率なんてどうでもいいわ
あの大金があったら、番組なんて……スポンサーなんて……

スィーク

ふぅ、これじゃ拉致があかないの……姫、番組を締めるの

アラーニェ

じゃな………
今回はこれで終わりじゃ、また、次回、楽しみに待っておれ

スィーク

さよならなの

アラーニェ

さらばじゃ

メティ

………わたくしのお金えええぇぇぇぇぇぇ

番組終了

楽屋
『黄金の一睡』

メティ

まんまとしてやられたわ……悔しすぎて……泣きそうだわ………

スィーク

気にするななの

アラーニェ

あの痴態は映っておらんし、さほど気にせんでもよかろう?

メティ

そんなことどうでもいいわよ、お金がどんぐりなんて、借用書が枯葉なんて……うぅ

アラーニェ

古今東西、こういう話はよくある
現実に帰れただけでも、よしとせんか

メティ

もう、いっそ、夢の世界で生きてたかったわ!!

スィーク

はぁ……やれやれなの

メティ

アラーニェ放浪記

アラーニェ

『ここはどこなのじゃ?』

メティ

お馴染み司会者は、メティ=エリファスよ

アラーニェ

ふむ、妾がアラーニェ=オトカネじゃ、よろしく頼むぞ

メティ

さて、この番組はアラーニェさんの転送石の目的座標を曖昧に設定し、ゲストの希望が満たされる場所に飛んで旅する新感覚旅行番組よ

メティ

なお、アラーニェさんかゲストのどちらかが満足するまで帰れない縛りつきとなっているわ

メティ

前回を振り返ってみて、どうだったかしら?

アラーニェ

古城まで行ったが、結局、酒が飲めておらん!

メティ

わたくしとしても前回は非常に残念だったわ……
あともう少しで、黄金の指輪をわたくしの現金ものにできたのに……

アラーニェ

しかし、妾の命でひれ伏す鎧たちの爽快さと来たら愉快じゃったのう

メティ

あら、わたくしならいつでもできるわよ

アラーニェ

なんじゃ、金を貸しておるものたちに、金利を盾に土下座でもさせるつもりか?

メティ

逆よ、逆っ!
貴女が大金を積んでくれるのなら、わたくしは頭を下げてやるわ!
お-ほっほっほっほ!

アルル

アルルはお座りできないですよ~

アラーニェ

妾もできん………まぁ、何を積まれようが下げるような頭は持っておらん

メティ

さて、場の空気も温まったところで、そろそろゲストを呼ぼうかしら?

アルル

ほわぁ~、ゲストが来るですか~!
アルルも、気になるですよ~

アラーニェ

うむ、妾はひとり心当たりがあるのじゃが……まぁ、外れたら外れたで面白いのぅ

メティ

ゲストはこの方よ、どうぞっ!

アルル

…………

メティ

…………

アラーニェ

…………

メティ

出てこないわね

アルル

出てこないです~

アラーニェ

出てきておるの

メティ

……おかしいわね、ちょっと楽屋に行ってくるわ

アルル

行ってらっしゃいです~

メティ

…………………っているじゃない!

アラーニェ

今回のゲストは、優秀な薬師にして我が友、アルル=アルルーンじゃ

アルル

こんにちはです~、アルル~アルル~ンってお名前ですよ~

メティ

いるならいるっていいなさいよ!
……っていうか、貴女、毎回やってるわよね、持ちネタなのかしら?

アルル

アルル、ちゃんといるですよ~?

メティ

遅いわっ!
っていうか、この場合は早いが正しいのかしら?

アラーニェ

ところで、アルル、おぬしはどこへ行きたいんじゃ?

アルル

はいですっ!
アルルはお日様がポカポカなところがいいですっ!
アルルはそこで日光浴したいですよ~!

アラーニェ

お日様の恵みとな……うむ、常夏の『りぞーと』で『ばかんす』とやらも悪くないの

メティ

わたくしも久々に羽を伸ばして、ゆっくりお金の計算でもしようかしら?

アラーニェ

ふふふっ、ではさっそくいくか

アラーニェ

天日の 恩顧感じて 御詠歌を 声にいずるも 石のまにまに





アラーニェ

うむ、ここはどこなのじゃ?

メティ

なにを暢気なこと言ってるのかしら!?

アルル

ほわぁ~、真っ暗でアルル何も見えないです~
もしかしてアルル、また死んじゃったですか~?

アラーニェ

死んでおらん
今、妾が魔法で周囲を照らすから、しばし待っておるのじゃ

ボゥッ

アラーニェ

これで見えるじゃろ?

アルル

見えるですよ~

メティ

見えるには見えるけど、お金なんて数えれないわよっ!

アラーニェ

妾とて、南国に行きたかったのじゃ!
果実酒を味わいたかったのじゃ!

アルル

ふたりはわがままです~………
アルルなんて、お日様出てないところに連れてこられたです………

アルル

うぅ~、アルルたちはどうしてこんなとこ来ちゃったですか~?

アラーニェ

恐らく、転送石は何かの意図を汲んでいるはずじゃが
………それがどういう意図かは妾もわからん

メティ

くっ、そういう番組だけに文句も言えないわ

アルル

アルル、このままだとへにゃ~んってなっちゃうです~

メティ

何があっても契約書通り、当番組は責任を取らないわ!
あくまで自己責任よ!

アルル

むぅ~、メティさんには期待してないですよ~!

メティ

あら、それはよかったわ

アラーニェ

面倒じゃが仕方あるまい………出口を探した方がいいかもしれんのぅ

メティ

そうね、とにかく、歩くしかなさそうね

メティ

それにしても、この洞窟……妙に広くてとても歩きやすいわ

アルル

アルルがふよふよ~って歩いてても全然困らないです~

アラーニェ

ふむ、誰かが作った洞窟かもしれん

メティ

何のためよ?

アラーニェ

魔物の中には光を嫌うものもおるというし、そやつら地底に居を構えることもあるじゃろ

アラーニェ

妾たちはその洞窟に飛ばされてきたのかもしれんの

メティ

誰かがいるのなら、出口を聞けばいいわ

アルル

誰かいるですか~! 居たら返事をしてくださいです~!

誰かいるですか~……居たら返事をしてくださいです~………

アラーニェ

…………妾の気のせいでなければ……今、背後からアルルの声が聞こえたのぅ

メティ

奇遇ね、わたくしも聞こえたわ

アルル

う、後ろにもアルルがいるですか~!?
こ、怖いです~

アラーニェ

はっはっは!
この緊張感のなさ、さすがはアルルじゃのぅ

メティ

単にバカなだけじゃないかしら?

アルル

むぅ~、アルルはおバカさんじゃないです~
『アルルは天才だ~』ってとと様も褒めてくれるですっ!

メティ

ふふふっ、その『とと様』がおバカさんなのかしら?

アルル

む~、とと様も、ちょっとうっかりさんですけど、おバカさんじゃないです

アラーニェ

つまりはアルルとレイクは似たもの同士ってことじゃな

メティ

ところで、後から声が聞こえるってことは、この洞窟……幾重にも分かれ道があるってことかしら?

アルル

迷路ってことですか~?

アラーニェ

そういうことじゃな

アルル

迷路を簡単に出る方法、アルル知ってるですよ~

メティ

右側の壁に手をつけながら、ひたすら壁沿いに歩くっていう方法のことかしら?

アルル

おお、そうです~、お友達が教えてくれたです~

アラーニェ

アルル、入り口から始めたらその方法で出れるんじゃが………
途中からじゃと、一生出られんかもしれん

アルル

ほえ? そ、そうだったですか!?
アルル、危うく騙されるとこだったです!

アラーニェ

………そのお友達が不憫じゃな

メティ

アルルさんに教えたのが悪かったわね……それじゃ、行くわよ





メティ

ここ、道が3つに分かれてるわ…………
どうしようかしら?

アラーニェ

右じゃな

アルル

左ですよ~

メティ

真ん中だわ

アラーニェ

右に決まってるおる!

メティ

真ん中よ、真ん中に決まってるわっ!!

アルル

こういうのはアルルのいう通り左ですっ!

アラーニェ

ええい、わからんやつらじゃ、もうよい! 妾は右に進むぞ

メティ

………

アルル

………

アラーニェ

……なんじゃ、どうしておぬしら、ついてくるんじゃ?
勝手に他の道にいけばよい

アルル

アルルはピカピカ~って玉、出せないです……

メティ

つまり、そういうことよ……わかったかしら?

アラーニェ

なんじゃ、使えんやつらじゃな





メティ

あら、また3つに分かれてるわね

アラーニェ

次も右でどうじゃ?

アルル

ここ、さっきも通ったですよ~?

アラーニェ

ふむ、たしかによく似ているようじゃが……妾には違いがわからん

アルル

ここにアルルの蜜が落ちてるですよ~、だから通った道です~

アラーニェ

おおっ、それは本当か

メティ

……まぁ、これは褒めてあげるわ

アルル

これはとと様から教わったです~
えへへへ~、もっと褒めてもいいですよ~?

アラーニェ

ふふん、これで役立たずはメティということがわかったの!

メティ

わたくしを働かせたければ、まず、お金を持ってきなさい……話はそれからだわ

アラーニェ

使えんやつじゃ

アルル

使えないです~

アラーニェ

まぁよい、次は真ん中を選ぶかの

メティ

それじゃ、行きましょう





メティ

ん?
……やけに広い空間に出たわね

アルル

ほぇ~、壁が光ったです~!

メティ

ふっ、そんなわけないわ

アラーニェ

………いや、アルルの言うとおりじゃ!
ほれ、こうして光球を照らせば

キラッ

メティ

なっ!?
ここここ、これは、おおおおお黄金の輝きじゃない!

アルル

メティさん、落ち着くですよ~

メティ

落ち着いていられるわけないでしょう!!

メティ

おーほっほっほっごふっ……げほっ………………

おーほっほっほっほ!

アラーニェ

ここは魔物の住処じゃなく………
廃鉱となった金鉱山のようじゃな

メティ

金鉱山ってことはあれだわ、金貨の元よ、元っ!!
何やってるのっ!? さっさと掘るわよっ!

アラーニェ

嫌に決まっておる!
なぜ、妾がそんな無謀なことやらねばならんっ!
それに、掘るだけ無駄じゃ!

メティ

つべこべ言わずに堀りなさいよっ!!
無理な理由はあとで考えればいいわっ!!

アラーニェ

だから無理じゃと行っておろうに!
………これじゃから欲深いやつは

メティ

黄金を前に指をくわえて見てろっていうの!

アラーニェ

わからんやつじゃ……ここは廃鉱と言ったのをもう忘れたか?
金鉱が出んからこうして捨てられておる

アラーニェ

掘ったところで、そうやすやすと黄金なんぞ出るわけない!

メティ

わたくしはね、お金のためなら労力だっていとわないわっ!

アラーニェ

ふんっ、まぁよい!
妾は手伝わん故、おぬしがどうしようが一向に構わんが
微量の金が集めて金貨にするまで、時間と資金がいくらかかるか考えてみるんじゃな

メティ

…………わ、わたくしとしたことが、盲点だったわ

アラーニェ

ところで、さっきからアルルがやけに静かじゃな?
ほれ、アルル、どうしたのじゃ?

アルル

うぅ~、アルル、お日様ないからへにゃ~んってなっちゃったですよ~………へにゃ~ん

メティ

……ば、番組としては死なないでくれると助かるわ

アルル

死なないです~………力は出ないです~………へにゃ~ん

アラーニェ

いざというときは、妾が空間を開いて外に転送することも可能じゃが………どこに着くかはわからん

アラーニェ

今は出口を探すべきじゃな

メティ

出口がわかったら苦労しないわよ

アルル

あれれです~………

アラーニェ

どうしたのじゃ、アルル?

アルル

お歌が聴こえるですよ~

メティ

太陽がないせいで頭までおかしくなったのかしら?
…………あら、そういえばもともとおかしかったわね、ふふ

アラーニェ

なるほど、アルルにしか聴こえんのなら植物の声からもしれんの!

アラーニェ

どこから聞こえておるのじゃ!
ほれ、アルル……答えてみよ!

アルル

こっちです~





アルル

ここですよ~

メティ

外どころか、真っ暗じゃないの

アラーニェ

じゃが、他とは地質が違うようじゃな

アルル

あそこにお花が咲いてるですよ~

メティ

あら、本当だわ
でも、出口とは関係なさそうね

アルル

もうすぐ来るらしいですよ~

アラーニェ

何が来るのじゃ?

アルル

お日様です~……ふよふよ~

メティ

花の前に立ってどうするのかしら?

ピカッ

メティ

……え? 上から光っ!?

アラーニェ

おぉ!

アルル

はわ~お日様の光です

アラーニェ

この洞窟の上だけ、日の光が入ってくる穴があるようじゃな……
故に、ここだけ花が咲くというわけじゃ

アルル

はふ~、お日様ぽかぽかです~

メティ

………この花、なかなかキレイな色してるわね

アルル

褒めても蜜しかでないです~

メティ

貴女じゃないわよっ!
ここに咲いている花よっ!!

アラーニェ

おぬしにも花を愛でる気持ちがあるんじゃな!

メティ

ふふっ、わたくしぐらいになれば花の匂いをかぐだけでいくらで売れるかわかるのよっl
おーほっほっほ!

アラーニェ

風情というものを知らんやつじゃ………しかし、いい色合いじゃ、是非とも妾の庭に欲しいの

アルル

アルル、ふっか~つ!! ですっ!!

アルル

お日様、ありがとです~!

ブブブッ

アラーニェ

おっ、転送石が……!

シュ-ン!





アルル

あれれ、ここはどこですか~?

メティ

……誰がどうみたってスタジオだわ

アラーニェ

アルルも妾も満足したと、転送石が作動したんじゃな………
結局、酒も風呂も入れずじまい

メティ

わたくしは何一つとして満足してないわよっ!!

アルル

いい番組だったです………アルル次回もちゃ~んと見るですよ~

アラーニェ

さらばじゃ

メティ

ごきげんよう……
って勝手に締めないでくれるかしら!?

アルル

ばいば~い

番組終了

楽屋
「花らっぷ」

アラーニェ

ところで、気になったんじゃが、あの花はどんな歌をうたっておったんじゃ?

アルル

聞いたことのないお歌だったです~

アラーニェ

ほぅ、それはぜひとも聞いてみたいのう

アルル

それでは歌うです~

アルル

陽っ~ 陽っ~ 陽っ~ 太陽の恵みに俺たちは芽ぐみ~♪

アルル

実りだす午後に~祈り出す後光~♪

アルル

コール ゴッド サン~ 光合成~ 陽っ~、陽っ~陽っ~♪

アラーニェ

……韻は踏んでるようじゃな

メティ

新しいジャンルの音楽ね……

メティ

アラーニェ放浪記

アラーニェ

『ここはどこなのじゃ?』

メティ

視聴者のみなさん、ごきげんよう
わたくしは司会者兼ナレーション兼プロデューサーのメティ=エリファスよ

アラーニェ

妾はアラーニェ=オトカネじゃ、よろしく頼むぞ

アラーニェ

ふふふっ、ついに、ついに、妾の冠番組じゃっ!

メティ

あら、アラーニェさんがやる気でわたくしとしても大助かりだわ
ぜひ、面白い番組にしましょう

アラーニェ

当然じゃ! このように面白そうな催しに妾が手を抜くはずがなかろう!

メティ

ふふっ、期待しているわ

メティ

さて、この番組はアラーニェさんの転送石の目的座標を曖昧に設定し、ゲストの希望が満たされる場所に飛んで旅する新感覚旅行番組

メティ

それから、アラーニェさんかゲストのどちらかが満足するまでスタジオへは帰れないわ

アラーニェ

くくくっ、丁度良い
ここらで思いっきり羽を伸ばしたいと思っておったところじゃ

メティ

それで、アラーニェさんは旅先でどういうことをしたいのかしら?

アラーニェ

うむ、妾はその土地にしかないうまい酒と肴を味わいたいのう

メティ

貴女には番組の予算を割り振ってあるとはいえ、遠慮くらいはしなさい

アラーニェ

言われんでもわかっておる
おぬしには最初から期待しておらん

メティ

本当かしらね……

まぁいいわ、貴女が暴走したときはゲストに止めてもらうから

アラーニェ

ほぅ、妾を止められるゲストとな…………ふふっ、いったい誰じゃ?

メティ

ゲストはこの方よっ! どうぞ!

パチパチパチ

ルピュア

姫様のお目付け役として呼ばれました……ルピュア=オトカネです

ルピュア

………姫様、キューテも見てるんですから、あまり羽目を外し過ぎないようにお願いしますね

アラーニェ

うっ………キューテも見ておるのか…………じゃが、ルピュアよ

アラーニェ

こういうものは多少『バラエティー』に飛んだ方が面白い!
妾も不本意じゃが、童心に帰らねばならん

ルピュア

不本意って、姫さまはいつも勝手に童心に戻っちゃうじゃないですか!
少しは歳相応の振る舞いをしてくださいっ!

メティ

ふふっ、アラーニェさんの言う通りだわ
そういうルピュアさんだからスポンサーがつかないのよ

ルピュア

えっ……な、何の話ですか? 一芸とかだったら、わたしだってできますよ

メティ

舞踊だったら誰も期待してないわよ

ルピュア

……あっ、それじゃ空を飛ぶっていうのはどうですか?
これにはなかなか自信がありますよ

メティ

わたくしも飛べるわ

ルピュア

ふふん、でしたらわたしと対決でもしますか?

アラーニェ

そういうのは自分の番組でやらんか! 今は妾の旅番組じゃ、邪魔するでない!

ルピュア

だって、わたしの番組は……

メティ

恨むなら自分を恨みなさい!
この業界じゃ視聴率こそ正義! 視聴率こそお金なのよ!
おーほっほっほっ!

ルピュア

………はぁ

アラーニェ

それで、ルピュアはどこに行きたいのじゃ?

なに、言った先でゆっくりすれば良かろう

ルピュア

うぅ、姫様……………そうですね、異国のお城なんてどうですか?
ちょっと古めかしい古城とか

アラーニェ

うむ、城か……ふふふっ、うまい酒と広い風呂は期待できそうじゃの

メティ

うふふふっ、いいわ!
お城、いいじゃないっ!
王族にお金を貸せば、あとあと大金になって返ってくるわっ!

ルピュア

………姫様、ちゃんと祝詞を紡いでくださいね

アラーニェ

言われなくともわかっておる
ふむ、さっそく、目的地へと移動するかのう

アラーニェ

民草の 想い募りし いにしへの 城郭ゆくと 石のまにまに




アラーニェ

……ここはどこなのじゃ

メティ

城には違いないようだけど……生き物の気配はないし、廃墟ってところかしら

ルピュア

……幽霊でも出そうな雰囲気ですね

アラーニェ

これじゃと酒も肴にもありつけんではないか……

ルピュア

あれ、姫様
いつもみたいに愚痴の一つや二つ飛ばさないんですか?

アラーニェ

こんなことで怒っておったら、身が持たん………まぁ、妾も大人になったってことかの?

ルピュア

ふふっ、さては姫様、キューテが見てるかもしれないから大人しいんですね?

アラーニェ

なにを言っておるのじゃ、ルピュア! 妾はいつも大人しい、大人の女ではないかっ!

ルピュア

あはは、そうですね
そういうことにしておきましょう

メティ

それにしても廃墟にしては立派な城ね…………
うふふっ、お値打ち物ならあるんじゃないかしら

アラーニェ

なんにせよ、番組にならってこの場所を調べるしかなさそうじゃな

メティ

そうね、探索するわよ

うふふっ、宝物庫はどこかしら~?




メティ

あら、あれは何かしら?

肖像画のようね

アラーニェ

おおっ、これまた随分と偉そうな顔した人間の肖像画じゃな

ルピュア

もう姫様ったら………でも、確かに偉そうではありますね

お髭のカールした感じなんかが特に

メティ

ふふっ、これだけ偉そうな人間なのだもの、売れば高いはずだわ

ルピュア

え、売るんですか!?
それってただの泥棒じゃ……

メティ

この肖像画の所有者がいない以上、見つけたものが所有者だわ

つまり、この絵はわたくしのもの!

ルピュア

なに言ってるんですか、それはただの屁理屈ですよ!

メティ

あら? これだけの城なんだから武器庫ぐらいありそうじゃない

ルピュア

…………!

姫様、わたし、ちょっと用事を思い出しましたっ!

タタタタッ

アラーニェ

ルピュアのやつ、光物ぶきとなればすぐに目の色を変えおるの

メティ

武器庫よりも酒蔵の方がありそうね

年代物のぶどう酒なんて眠ってるかもしれないわ

アラーニェ

わ、妾も用事を思い出したのじゃ!

タタタタッ

メティ

ふふっ、言ったわね

うふふっ、さて、わたくしも宝物庫を探さないと




ルピュア

ひ、姫さまーーーっ!
わたし、すごいものを見つけちゃいましたっ!

アラーニェ

なんじゃ、酒蔵でもあったのか?

ルピュア

酒蔵じゃありません!
とにかくきてください

アラーニェ

あっ、これ、ルピュア、ひっぱらんでも妾は逃げん

ルピュア

物凄いんですよ! あぁ、なんとかして持って帰りたい

アラーニェ

わかったから離さんか!

ルピュア

ほら、見てくださいよ
あの甲冑っ!

アラーニェ

……む、確かに立派な甲冑、それも西方の鎧のようじゃな

ルピュア

あの鎧が持ってるサーベル………はぁ、なんて美しいでしょうか………

ルピュア

家に持って帰って飾りたいところですが………残念ながら運べませんね

アラーニェ

ならば、これを動かせばよかろう?

ルピュア

え? できるんですか、姫様!

アラーニェ

出来るも何も、もうやってしもうた

ガシャン! ガシャン!

ルピュア

あわわわ、鎧が動いてますよ!
さすがです、姫様

ピコーン!

アラーニェ

……ん!
ふふふ、妾は今、面白き悪戯を考え付いてしまったようじゃ

ルピュア

………禄でもない表情を浮かべてますよ

アラーニェ

ふっふっふ、この鎧を連れて、メティを驚かしてやるかのぉ

ルピュア

はぁ………もう、わたしはどうなっても知りませんからね

アラーニェ

ふふっ、では鎧、ついて来るのじゃ!

ガシャンガシャン




ルピュア

あっ、メティさんいましたよ!
…………あれ、こっちに向かって走ってきてますね

アラーニェ

出番じゃぞ、鎧っ! あの守銭奴を脅かしてやるのじゃ!

ガシャンガシャン

ルピュア

あの……鎧に目もくれず、こっちに走ってきてますよ………なんかあったかもしれませんね

タタタタッ

メティ

はやく逃げるわよっ!

ルピュア

え、どういうことですか?

メティ

うしろよ、うしろっ!!
ほら、突っ立ってないでさっさと走りなさい!

ルピュア

え?

ガシャン ガシャン ガシャン
ガシャン ガシャン ガシャン
ガシャン ガシャン ガシャン
ガシャン ガシャン ガシャン

ルピュア

えええっ!!あの、鎧の大群がこっちに向かって走ってきてますよ!

アラーニェ

ふふっ、あははははっ! なるほど、そりゃメティも鎧1体じゃ驚かんわけじゃ!

ルピュア

のんきなこと言ってる場合じゃないですよ! 姫様、早く逃げましょう!

タタタタッ

ガシャンッ! ガシャンッ!

アラーニェ

これ鎧っ!
おぬしはついてこんでいい!
ほれ、さっさと戦わんか!

ガシャンッ!

ルピュア

ちょっとメティさん! 一体なにしたんですか!?

メティ

……宝物庫に眠っていた黄金の指輪をわたくしの所有物にしただけよ
そうしたら、宝物庫の壁が崩れて鎧が現れ………

メティ


今に至るわ!

ルピュア

案の定、盗んだですね…………
あ、でも指輪を取ってこうなったんでしたら、返せばいいだけなんじゃ……

メティ

嫌に決まってるでしょうっ!!
これはもう、わたくしの所有物だわ!
売りはしても返すなんてするわけないわよ!

アラーニェ

ふふっ、さすがはメティじゃな! 迷惑きわまりない!

メティ

笑ってないで、転送石使ってさっさとここから帰るわよ

アラーニェ

そうしたいのは山々じゃが、妾とルピュアが満足しておらんからの……残念ながら転送石は作動せん!

メティ

だったら今すぐ満足しなさいよ!

ルピュア

この状況で何を満足すればいいんですかっ!

アラーニェ

うむ、愉快なことには変わらんが、妾の求めているものではないぞ

ルピュア

他に何か動きを止める方法を考えた方が早そうですね……

アラーニェ

おおっ、そうじゃった、さっきの肖像画のもとにいけば、主君の威光で止まるかもしれん

ルピュア

さすが姫様! 名案です

メティ

そうと決まれば、すぐにいくわよ!

ルピュア

はい!

ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ!

アラーニェ

だから、おぬしは戦わんか!




メティ

はぁはぁ……この偉そうな肖像画を見せればいいのかしら?

アラーニェ

わからんが、やる価値はあるはずじゃ!

ルピュア

あ、来ました! 鎧の隊列がこっちに!

メティ

見なさい、愚民どもっ!
そして、跪きなさい!

ガシャン、ガシャン、ガシャンッ
ガシャンッ、ガシャンッ、ガシャンッ!
ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ!!

ルピュア

……怒ってますね

アラーニェ

どうやら、失敗のようじゃな

メティ

とにかく、また走るわよ!

ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ!

アラーニェ

これ、鎧っ!
足止めの一つでもしてこんかっ!

アラーニェ

ん、なんじゃ、鎧……ほう、あの肖像画の男が嫌われていた……
って、なぜそれをはやくいわん!

ルピュア

あの、鎧さん……あの隊列を止める方法ってないんですか?

ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ!

アラーニェ

ふむ……なにっ!?
妾が指輪をつけて、命じればいいのか!?

ガシャガシャンッ! ガシャンッ!

アラーニェ

ほうほう、妾の姫君としての風格が必要なのじゃな!?
ふふふっ、そこまで言われれば仕方ないのぅ

メティ

嫌よ!

アラーニェ

まだ何も言っておらん

メティ

この話の流れで出る答えなんて一つじゃない!
わたくしがこの指輪を手放すのは売るときだけよ

メティ

そうね、貴女たちが買う、もしくはレンタル料を払うっていうなら考えなくもないわ

アラーニェ

妾がうまい具合に命じれば、黄金の指輪を手にした上で、さらなる宝の在り処を聞けるかもしれんぞ?

メティ

………レンタル料は金貨一枚よ

ガシャン! ガシャン! ガシャガシャンッ!

アラーニェ

ほう、妾たちがここで立ち止まっても、攻撃されないんじゃな?

ルピュア

あ、そうなんですか……メティさん、地の果てまでがんばって走ってください

メティ

う、裏切るつもりかしらっ!?
くっ、汚いわよ!

アラーニェ

おぬしにだけは言われとうない

ルピュア

このまま、呪われた指輪を持って地の果てまで逃げ続けてください

メティ

…………ふんっ、わかったわっ!

ルピュア

よかったぁ、やっとわかってくれたんですね

メティ

この指輪が売れるまで永遠に走り続けてやるわっ!

アラーニェ

あっはっはっ、ここまで来るとただの阿呆じゃ

ルピュア

笑い事じゃありません……メティさんも走ってないで、飛んばいいんです、飛べば!

ガシャン! ガシャン!

メティ

そうね、外に出たら飛んでしまえば………………
あら、てことは、この城を抜けたらわたくしの勝利じゃない!

メティ

うふふっ、この指輪はわたくしのものよ!
おーほっほっほ、ごふぉ、げふぉ………

メティ

…………はぁはぁ…………つ、疲れたわ……

ガシャン! ガシャン! ガシャガシャガシャンッ!

ルピュア

走ってる最中に高笑いなんてするからです!

がシャン! ガシャガシャシャンッ!
ガシャガシャガシャンッ!

アラーニェ

さっきからうるさいのう、どうしたのじゃ、鎧

ガシャガシャガシャン!

アラーニェ

ほう、もう妾たちはここから抜け出せないと? どうしてじゃ?

ガシャガシャ…………ガシャン!

アラーニェ

ふむふむ……このさきは行き止まり………
って、だから、それを早くいわんかっ!

メティ

……本当に、行き止まりのようね

ルピュア

わたしたちは、その……メティさんの付き合いで走ってきましたけど………
襲われないそうなので、姫様、もうこの辺りで

アラーニェ

そうじゃな、これ以上ないぐらいの義理立てはしたしのう

メティ

あ、貴女たち、やっぱりわたくしを見捨てるのかしら!?
最低、屑、悪魔、外道ッ!

アラーニェ

なぜ、おぬしは自分の悪口を言っておる

メティ

ぐぬぬ…………

ルピュア

メティさんって、普段から『金の切れ目が縁の切れ目』って冷たく言い放ってそうですよね……

メティ

否定はしないわ…………

わかったわよ……アラーニェさん、わたくしの指輪を預けるからなんとかしなさい!

アラーニェ

ふふふっ、妾に任せるが良い…………指にこうして……

ガシャン ガシャン
ガシャン ガシャン

メティ

は、速くしてくれるかしら!

アラーニェ

どうじゃ、似合うかの?

ルピュア

姫様、似合ってますよ

メティ

似合う似合わないはどうでもいいわよ!
さっさと鎧たちに止まるように命じなさいっ!

アラーニェ

ふふ、まぁじっくり見ておれ…………亡者ども、止まるがよい!

この指輪が目に入らぬかっ!

ガシャンッ! ザッ!

ルピュア

た、隊列組んでキレイに止まりましたよ!

アラーニェ

……おおっ、なんと爽快なのじゃ!
ふふっ、これはなかなか気分が良いぞ

ルピュア

いい剣がたくさん……はぁ、欲しい……

メティ

動く鎧……ふふっ、これを傭兵にしたギルドを立ち上げれば……
金の匂いがするわ!

ブブブッ

アラーニェ

おっ、転送石が……!

シューン




ルピュア

………………

メティ

………………

アラーニェ

………………

ルピュア

帰ってきちゃいましたね

メティ

そうね、ここはどう見てもスタジオだわ

アラーニェ

ゆ、指輪がない!

メティ

ちょ、ちょっと待ちなさいっ!! それはどういうことかしら!?
わたくしの指輪をどこかで落としたのよ!!

アラーニェ

確かにつけておったんじゃが……うーむ

ルピュア

うぅ、武器も忘れちゃいました……

メティ

わかったわ、もう一度、戻るわよ

アラーニェ

無理じゃな
あそこがどこかもわからぬ以上、妾が転送石を使ってもいけん

メティ

はぁ……何よそれ………わたくしの苦労が……

アラーニェ

メティ、落ち込む前に番組ぐらい締めんか

メティ

貴女たち、どうだったかしら……?

ルピュア

やっぱり、残念ですね……

アラーニェ

あの鎧、なかなか面白いやつじゃったから、つれて帰ってくればよかったのう

メティ

はぁ……それじゃ、また次回の『アラーニェ旅行記』をお楽しみに
ごきげんよう

アラーニェ

さらばじゃ!

ルピュア

またお会いしましょう

番組終了

楽屋
「一期一会」

ルピュア

結局、あれはどこだったんでしょうか

アラーニェ

妾が酒蔵を探しておるときに、あの城について書かれた本を読んだぞ

ルピュア

え? どんなことが書かれていたんですか?

アラーニェ

うむ、どうやらあの土地は魔物との争いに負けた人間の国のようじゃ

アラーニェ

そこの姫が自害したところまでは書かれておった…………
もしかすると、あの肖像画の男は国を捨てて逃げたのかもしれんのぅ

ルピュア

………改めて、いい世の中になりましたね

アラーニェ

ルピュアの言う通りじゃな

アラーニェ

しかし、妾は酒も風呂にもめぐり合えずじまいで……

ルピュア、今日は帰ったら酒じゃ! 宴会じゃ!!

ルピュア

はぁ、少しは大人になったと思ったんですが………

メティ

そんなことどうでもいいわ!
それより、あの場所がどこにあるのか教えないさい!

メティ

わたくしの指輪を取り返してくるわ

アラーニェ

残念じゃが、ああいうのは一期一会…………
諦めるんじゃな