ヴェーラ

海賊の掟、その4っ!!

ヴェーラ

終わり良ければ全てよしっ!!

メティ

お宝発見、冒険バラエティ!
ヴェーラのどきどき冒険記!

メティ

お金の海に溺れるみなさん、ごきげんよう
司会のメティ=エリファスです

ヴェーラ

やがて歴史に名を刻むっ!
ヴェーラ=M=デーンとはあたしのことだーーーっ!!

ドンッ!!

ヴェーラ

ふふーん、やっぱ、こうでないと

メティ

さて、この番組もいよいよ最終回となってしまったけど、振り返ってみてどうかしら?

ヴェーラ

1回目はミリータと山賊のお宝探しに行って、山の主と戦って、ミリータに水差されたでしょ?

メティ

あぁ、遠い昔のようね

ヴェーラ

んで、2回目はキューテ姉拉致して連れてったものの、砂漠で説教された記憶して乗っててないし

メティ

あの説教眼鏡にしてやられたわね

ヴェーラ

それから、3回目の前回は…………
まぁ、リンがおいしいとこ全部持ってちゃって、あたし、何もしてないし

メティ

ジャングルに火を放つのがおいしいなら、間違いなくそうね

ヴェーラ

ああああーっ!!
まだまだ暴れ足んねーーーっ!!

メティ

あれでだけ暴れてまだ足りないっていうから驚きね

メティ

でも、今回のロケは満足したんじゃないの?

ヴェーラ

ん?
今回は、そりゃ、ゲストがゲストだったし、結果も結果だったし、あたしとしては満足だったかな

メティ

そうよね、あれだけ好き放題やったんだもの

ヴェーラ

そういうメティもご機嫌じゃん、何かあったの?

メティ

うふふっ、それは最後に報告するわ

ヴェーラ

ふーん、ま、いいけど

メティ

それじゃ、今回のゲストを紹介するわ、どうぞ!

パチパチパチ

シレーネ

シレーネ=セントールよ
視聴者の貴方、お粗末な最後にがっかりしないことね

メティ

がっかりの原因が何言ってるのよ

シレーネ

……くっ

ヴェーラ

ふふん、『猪突猛進』って言葉が一番似合うやつが来たみたいね~

シレーネ

貴女にだけは言われたくないわよ………
まったく、散々な目にあったわ

メティ

ゲストが言うそのセリフ、はっきり言って聞き飽きたわ

ヴェーラ

ま、何だかんだ言ってもシレーネも最後は楽しんでたから文句ないっしょ?

シレーネ

最初から暴走してた貴女に言われるのは腹が立つけど………確かに、久々に燃えたわね

メティ

これだから戦闘狂は………
一銭の価値もないことに、本気になれるだなんて、まったくどうかしてるわ

メティ

挙句、あんなことまでするんだもの、理解に及ばないわね

シレーネ

いつもなら反論できるのに………今回は何も言い返せそうもないわ

メティ

さて、そろそろVTRに行くわ、どうぞ!



VTRスタート

ヴェーラ

しゃーーーーっ!!
ヴェーラ=M=デーン、参上ーーーーっ!

メティ

さて、今回はリンさんから頂いた地図を頼りに、海の真ん中にある孤島に来ているわ

メティ

最後だから、絶対に!
宝を見つけるわよ!

ヴェーラ

もっちろん!
このあたしが手ぶらで帰れるかっての!

メティ

ふふ、それじゃ今回のゲストをお呼びするわ、どうぞ!

シレーネ

ふふっ、シレーネ=セントールよ
ようやく呼ばれたと思ったら、まさか最終回だなんてね

ヴェーラ

最後くらいは、いろいろ本気で楽しみたいからね~?

シレーネ

残念だけど、宝になんて興味ないわよ
秘境に出て来る野獣と戦いたくて来ただけだから

メティ

は?
このバカは何を言ってるのかしら?

シレーネ

だ、誰がバカよ、誰が!

メティ

貴女に決まってるじゃない!
お宝発見バラエティなのに『戦いに来ました』って、バカ丸出しだわっ!!

シレーネ

なんですってっ!!

ヴェーラ

ま、シレーネのバカは今に始まったことじゃないからさー

シレーネ

わかったわ……
そこまで言うなら、わたしもその宝探しに本気を出してもいいわ

シレーネ

ただし、見つけた場合、わたしも宝の一部を貰うけどいいかしら?

メティ

…………野獣と存分に戦いなさい、おーほっほっほ!

ヴェーラ

さ、守銭奴はほっといて、先行くよ

シレーネ

そうね

メティ

あ、待ちなさいよ!!




ナレーション

海に沈んだとされる古代文明、そして、その秘宝が眠る島で、我々に待ち受けていたものとは一体




ヴェーラ

あれ…………ふふっ、なるほどね~

シレーネ

あら、どうしたの、ヴェーラ

ヴェーラ

どうやらこの辺りにトラップが―――

ガチャン

ヒュッ

ヴェーラ

よっと
…………という感じで、中々上質なトラップが仕掛けられてるね

メティ

矢が飛んできたわよ……

シレーネ

そんなもの、わたしが引っかか―――

ズボッ

シレーネ

くっ、落とし穴!

ヴェーラ

ふーん、今度は落とし穴か……、んふふ、危なくハマ―――

カタッ!
シュッ!

ヴェーラ

また矢!?
ま、余裕で避けちゃうんだけど

シレーネ

ふっ、余所見しているから、矢がとんで―――

ガタンッ!
シュッ!

シレーネ

う、上から槍ですって!?
ハッ!

ヴェーラ

ふふん、他人に忠告す―――

メリメリ、ガタッ!

ヴェーラ

今度は木!?
もういい加減にしてほしいわ

シレーネ

だいた―――

ガタッ!

メティ

…………先に行くわよ




ナレーション

一行の行く手を阻むように仕掛けられた数々のトラップ

ナレーション

しかし、それを難なく回避し、ようやく、古代遺跡の神殿へと辿りついた




ヴェーラ

へぇー、あれがリンの言ってた、古代文明の遺跡ってやつ?

シレーネ

遺跡………
確かに何かの神殿みたいね

メティ

超古代文明のお宝なんて…………うふふっ、売れるわっ!!

シレーネ

だけど、扉は閉まってるわよ

メティ

何か開くためのカラクリがあるはずだわ

ヴェーラ

しゃらーーーいっ!!

ボコッ!!

シレーネ

………はぁ

メティ

…………

ヴェーラ

ほら、開いたわよ

シレーネ

貴女ね、遺跡を壊すなんてどういう神経してるのよ!

ヴェーラ

へ?
いや、ちょっと押したら壊れただけじゃん

メティ

ちょっと押す掛け声が、『しゃらーーいっ!』って…………
はぁ、先へ急ぐわよ

シレーネ

納得いかないわね

ヴェーラ

いいのいいの、こんなのあったところで、誰もありがたがらないんだからさー

シレーネ

キューテさんが、どんな顔するか……
目に浮かぶわ




ナレーション

古代文明の神殿に入る一行、しかし、我らの智をためさんと、行方を阻む一体の銅像―――




ヴェーラ

ホイッ!

ボコッ!!




ナレーション

それも、瞬く間に破壊され、ついにシレーネ隊員の堪忍袋の尾が切れた




シレーネ

ちょっとヴェーラ、貴女、何でもかんでも壊しすぎよっ!!

シレーネ

貴女のその壊し癖のせいで、シンクがどんな目にあったのか、忘れたの!?

ヴェーラ

は?
忘れるわけないじゃん、あんな良い思い出をさ

シレーネ

だったら、ちょっとは自重しなさいよ!!

メティ

そうよ!
壊してばっかりで、放送できそうなところがないじゃない!!

ヴェーラ

壊す?
ちょっと押しただけだって、さっきから言ってるでしょ?

シレーネ

ちょっと押したぐらいじゃ壊れないわよっ!!

シレーネ

見てなさい、棒術で叩きつけたって

ドカッ!

メティ

………崩れたわよ

ヴェーラ

あはははっ、壊してやんの

シレーネ

………!
ハァッ!

シュッ

ヴェーラ

おっとっ!
危ない危ない……
突然、棒なんて振り回して、ずいぶんやる気じゃん?

シレーネ

もうどうでも良くなったわ………
結局、わたしが欲しいのはお宝なんかより、貴女だったってことね

メティ

……やっぱり、そっちの気が?

シレーネ

ち、違うわよ!!

ヴェーラ

ふふん、いいじゃんいいじゃん、宝探しにも飽きてきたとこだし、いっちょ相手してやんよ

メティ

あー

シレーネ

ええ、ここで決着をつけましょう

メティ

外でやりなさいよ、外で…………

ヴェーラ

メティの言う通り、外でやった方がいいかもね
こんな狭い神殿の中じゃ、得意の棒術のキレも悪くなるでしょ?

シレーネ

ハッ!!

シュッ!

ヴェーラ

おっと……へー、中々やるねー

シレーネ

何も振り回すだけが棒術じゃないわ
槍のようにつけば、ここでも十分戦える……

シレーネ

ふふっ、わたしの心配より自分の心配をしたらどうなの?

ヴェーラ

ほぇ?
何が?

シレーネ

自慢の足が動かし辛そうじゃない?

ヴェーラ

だったら、振り回せるように、壊すだけ!
ほいっ!!

シュッ!

ドカッ!

メティ

………神殿がヤバイわ
崩れる前にお宝を探さないと

シレーネ

ハッ!!

ヴェーラ

よっとっ!




ナレーション

探険隊はまさかの仲間割れ
古代文明の宝を目前に、手がかりである遺跡が無残にも崩れ落ちてしまった




ヴェーラ

あっははははっ~!
今回は引き分けにしといてあげる

シレーネ

はぁはぁ……そうね、そういうことにしときましょう

ヴェーラ

にしても、ちょっとやりすぎちゃったわね

シレーネ

…………そうね、見る影もないくらい、崩れたわね

シレーネ

宝はあったのかしら?

ヴェーラ

さぁ?
けど、これは見つけた……
ほいっ

シレーネ

何かしら、これ………
金属の棒みたいだけど

ヴェーラ

両端に変な凹凸付いてるんだけど……ま、あたしはいらないかな

メティ

…………それをよこしなさい

ヴェーラ

お、メティ、どこ行ってたの?

メティ

遺跡が崩れる前に、宝を探し続けたわ…………
でも、途中で崩れて、必死に脱出してきたとこよ……

シレーネ

…………あ、哀れね

メティ

同情なんていらないわ
そんなことより、さっさとそれをよこしなさい

シレーネ

ほら、受け取りなさい

メティ

ふふっ、何とかうまいこと言って高く売ってやるわよ
おーほっほっほっほ!

ヴェーラ

それじゃ、帰るわよ

シレーネ

そうね

メティ

ごふっ、けほっ…………砂埃が……




ナレーション

こうして、探険隊の戦いは終わりを告げたのだった




ヴェーラ

何これ、最終回ってより打ち切りって感じがするわね

シレーネ

少し、戦いを楽しみすぎたわ
…………反省してる

メティ

あら、あれぐらい派手にやってくれて助かったわ
視聴率も期待できそうだし

シレーネ

機嫌がいいわね、メティ

メティ

うふふ、そうかしら?

ヴェーラ

ふふっーん、なるほどね………
あんさ、メティ、ロケで拾った宝っていくらで売れた?

メティ

どうかしらねぇ

シレーネ

ちょっと、気になるじゃない、教えなさいよ

メティ

さて、これで『ドキドキヴェーラ探険記!』も終わりよ

メティ

またいつの日か、会いましょう!
ごきげんよう!

ヴェーラ

んじゃね~

シレーネ

気になるわ

番組終了

楽屋
『プライス』

ヴェーラ

んで、結局いくらで売れたの?

メティ

うふふ、大した額じゃないわ

シレーネ

……怪しい

メティ

さぁてね
おーほっほっほ!

ヴェーラ

海賊の掟、その3っ!!

ヴェーラ

宝が欲しけりゃ地面掘らず、資料掘れーーーーーっ!!

メティ

お宝発見、冒険バラエティ!
ヴェーラのどきどき冒険記!

メティ

ごきげんよう、愚民のみなさん
司会者はお馴染み、メティ=エリファスよ

ヴェーラ

胸踊る冒険も、見果てぬ海も、眠り続ける宝の山も、行って探して手に入れる!
ヴェーラ=M=デーンとはあたしのことよーーーーーっ!!

ヴェーラ

…………あれ、『ドンッ!』は?

ドンッ!

ヴェーラ

遅い!

メティ

さて、この番組もいよいよ第3回目の放送っ!
ヴェーラ探険隊の冒険も残すところあと2回となったわ

メティ

果たして、残り2回でお宝を発見できるのかしら

ヴェーラ

今回の秘境はジャングルだったんだけど、まー、今回も大変で
なんかこう、燃える展開ってやつ?

メティ

たしかに、今回は過去最大に熱い内容だったわね

ヴェーラ

しかも、ロケの期間も過去最大だったし

メティ

………はぁ、今思い出すだけでも辛い日々だったわ

ヴェーラ

あっはっはっはっ!
いやー、見所しかないもんだから、何も言えないねっ!

メティ

さて、史上最大のロケに挑んだゲスト隊員をお呼びするわ、この方よ、どうぞ!

パチパチパチ

リン

………リン=ドラーヴェです

リン

あの、すみませんでした!

ヴェーラ

なに謝ってんの?
別にリンは悪いことしてないじゃん

メティ

…………そうね、何一つ悪いことはしてないわ

リン

………あれが悪くなくて、何が悪いっていうの?

メティ

…………

ヴェーラ

ん~、ま、事故だし、あんま気にしなくていいんじゃない?
しゃーないしゃーない

リン

あの、メティちゃん

メティ

なにかしら?

リン

本当に、放送するの?

メティ

苦情炎上覚悟の上よ
それに、スポンサーの許可もちゃんと取ってあるわ!

ヴェーラ

だったら、リンも心配することなんてないっしょ?

リン

うぅぅ、せめて、シンクさんが見ないことを祈ります………

メティ

ふふっ、それにしても今回の人選は意外だったわ、リンさんをゲストに呼ぶなんて

ヴェーラ

昔から言うのよね~、お宝探すなら、まず『土を掘るより資料を掘れ』ってさ

メティ

そういうことは放送前の打ち合わせの時に言いなさいよ

ヴェーラ

資料を掘ったって出てこないもんは出てこないのよ

ヴェーラ

ま、結局資料を掘るしかなくなったから、読書家のリンを呼んだんだけどね

メティ

その選択が、あの衝撃的な結末を迎えるきっかけになるなんて………探険隊は知らなかった

リン

………うぅ、本当にごめんなさい

メティ

貴女も気にしすぎよ、いつもみたいに腹黒いとこでも見せなさい

リン

だ、だから、わたしは腹黒くなんてありません

ヴェーラ

ふふっん、なるほどね

メティ

あら、ヴェーラさん、何か分かったような顔してるけど、どうしたのかしら?

ヴェーラ

謝罪して、好感度アップさせよーって魂胆か、さすがはリンね

リン

ち、違います、本心から謝ってるんです
………だって、冗談にならないことしちゃったし……

ヴェーラ

ま、ちょい洒落にはなんないかもね

メティ

さて、視聴者もどういった結末を迎えたのか、気になる頃だと思うから………VTRスタート



VTRスタート

ヴェーラ

ほいとうちゃーーく、秘境冒険、第3回目ーーーっ!
今回は秘境はジャングルだーーっ!

メティ

というわけで、わたくしたちは今回の秘境であるジャングルを一望できる山からお送りしているわ

メティ

………そろそろお宝の手に入れて、金貨の山に換えたいところね

ヴェーラ

だいじょぶだいじょぶ、今回はちゃーんと使える助っ人を連れてきたから
ね、リン

リン

ふふ、微力ながら頑張ります

メティ

それで、今回はどんな手を使って連れてきたのかしら?

ヴェーラ

ふぇ?
どんな手って、普通に頼み込んだけど

リン

うふふ、宝物の中に指輪とかあったら、シンクさんにプレゼントできるかなーって思って

メティ

ヴェーラさん、リンさんが抜けがけしようとしてるわよ

ヴェーラ

別にぃ、あたしは海賊だし
欲しいもんは奪うのが掟ってね

リン

………もし、シンクさんを海に連れ出したら、ヴェーラちゃんがどこにいようとシンクさんを見つけて連れ出すからね

ヴェーラ

ふふっーん、いいね、リンの殺気
ちょっと黒いけど、あたし、嫌いじゃないね!

リン

く、黒くなんかありません!

メティ

それで、今回探すのはどんなお宝なの?

リン

うん、えっとね、この近くに古来に栄えた魔物の国の遺跡群があって、その国の隠し財宝がジャングルの中に眠っているらしいの

メティ

その『どこか』のせいで、毎回当てもなく歩き続けてるのよ

リン

ふふ、ちゃんといろんな文献から情報を集めておいたから、大丈夫
えっとね、このジャングルの真ん中に樹齢何千年にもなる大樹があるんだって

リン

そして、その大樹の下に、隠し財宝があるって書いてあったの

メティ

その情報筋は?

リン

学園の図書館にあった書籍、文献、聞き込み………
調査した結果のレポート提出しよっか?

メティ

いえ、いいわ
ようは真ん中まで行けばいいんでしょう?
それなら、ヴェーラさんを担いで飛べばいいわ

リン

それがね、メティちゃん
ジャングルの上空は大樹林の主が制圧してて、見つかったら最後、強靭な翼で叩き落とされるんだって……

メティ

それならその主を、ヴェーラさんに叩き落としてもらえばいいでしょう?

ヴェーラ

んー、やってやれんのこともないんだけど、飛ぶやつ相手にすんのは骨が折れるし

ヴェーラ

せーっかく、あたしが痛めつけても空に逃げられたらどうすることもできないし、不完全燃焼じゃん

メティ

それなら、仕方ないわね………
それじゃ、貴女たち覚悟は出来てるかしら?

リン

うん………
できてます

ヴェーラ

んー?
覚悟ってなに?

メティ

……………貴女、このジャングル見てもなにも思わないのかしら?

ヴェーラ

ま、そこそこおっきなジャングルだよね

リン

そ、そこそこ……?

メティ

見なさい! こんな高い山に登っても、ジャングルの端なんて全然見えないわ!
広すぎるわよ!

ヴェーラ

海と比べれば、ちっさいちっさい
ほら、ヴェーラ探険隊しゅっぱーつ!

リン

あはは……
うん、シンクさんのために、頑張らないと!

メティ

視聴率のために、がんばりなさい!




ナレーション

こうしてヴェーラ探険隊は、宝に誘われるようにジャングル深くへと足を踏み出すのであった




メティ

な、何も起こらないわ

リン

え、何も起こらない方がいいんじゃないの?

ヴェーラ

たしかに地味すぎ
全然、つまんないんだけど

メティ

このままだと地味すぎて番組にならないわ…………
仕方ない、演出の力を借りるしかないわね

リン

演出?
メティちゃん、ヤラセはどうかと思うけど

メティ

人聞きの悪いこと言わないでくれるかしら?
演出はあくまで演出、ありのまま起こったことを少しだけオーバーに言うだけよ

リン

うーん、いいのかなぁ……

ヴェーラ

ま、いいじゃない?
あたしたちにはあんま関係ないし、勝手にやらせとけばいいのよ

リン

ヴェーラちゃんがそういうなら…………




ナレーション

周囲を警戒しながら、歩くヴェーラ探険隊一行

ナレーション

しかし、探険隊の道を阻むように次々と危険な事態が振りかかって来る!




メティ

な、なんて激しい川かしら!
これじゃ、渡れないわね……迂回するしかないわ!

ちょろちょろ

ヴェーラ

なるほどねー
あれだけアップさせたら小川も激流に見えなくもないかな

リン

綺麗なお水だし、飲んでいこうか




ナレーション

激しい川を迂回した一行、次に待ち受けていたのは、巨大生物!




メティ

ヴェ、ヴェーラさんの肩に巨大な毒蜘蛛がいるわ!

ヴェーラ

ひょいっと

リン

ち、小さい………
あれ、これって毒蜘蛛じゃないよ

メティ

…………




ナレーション

次から次へと待ち受ける困難に翻弄される探険隊一行

ナレーション

果たして、無事に宝を手に入れることができるのだろうか!




メティ

おーほっほっほっ!
見える、見えるわ!
画面に釘付けにされた愚民どものバカ面がね!

ヴェーラ

安っぽくて誰も見ないんじゃね?

メティ

見るわよ、なんせ視聴者っていうのはバカの集まりだもの

リン

あはは…………
ところで、わたしたち……今どの辺りを歩いてるのかな?

メティ

知らないわよ

ヴェーラ

さーね、あたしもしんないけど
ま、歩けばいつか着くって、こういうもんは

メティ

貴女、毎回それしか言わないわよね……

リン

そ、それなら、一回引き返した方がいいんじゃ?

メティ

来た方角ってどちらかしら?

ヴェーラ

あたしの感だとこっちって言ってるけど、あれ、もう出んの?

リン

わたしはそっちじゃないと思うけど…………わたしたち、もしかして迷子なんじゃ…………

ヴェーラ

違うんじゃない?
これはもっとグレードの高いやつ

リン

……そ、遭難?

ヴェーラ

そゆこと
ま、歩いてたらいつかどこかに着くって、こういうもんは

リン

…………

メティ

…………

ヴェーラ

ヤバくなったら、あたしが大樹林の主を倒せばいいだけでしょ?
余裕余裕っ!
あっはっはっは!

メティ

……どうせ、こうなるだろうとは思ったけど………遭難するなんてね

リン

あは、はぁ…………シンクさぁん




ナレーション

迷子……もとい、遭難を余儀なくされた我々探険隊はヴェーラ隊長に先導され、ジャングルを歩き続けた

ナレーション

…………その一部始終をご覧ください




ナレーション

遭難2日目




ヴェーラ

大樹、全然ないわね

リン

大樹よりも、先にジャングルから出た方がいいと思うけど、ヴェーラちゃん

メティ

まだ出るには早いわ!
探すわよ、大樹を!
お宝を! そしてお金を!

ヴェーラ

ふふん、そうこないとね!
よぉーーっし、隊長に続けーーっ!




ナレーション

遭難1週間後




ヴェーラ

にしても、なかなかでっかいジャングルね!
水も食料も豊富だし、サバイバルにぴったりじゃん

リン

わたしたち、本当にまっすぐ歩けてるのかな…………

メティ

ここさっきも歩いた気がするけど、気のせいかしら?




ナレーション

遭難2週間後




ヴェーラ

歩くばっかりで飽きたんだけど
獣もあたしにびびって出てこないし、強いやつでもいないの!?

リン

…………

メティ

…………

ヴェーラ

なに、ふたりともげっそりしてんのさ、スタッフも全然カメラ回してないし
……ほんとにやる気あんの!?

メティ

仕方ないでしょ…………カメラの撮影にも限度があるのよ

リン

……ここ、昨日も歩いたような気がするんだけど…………

メティ

…………あら、ほんとね…………あの花、昨日も見た気がするわ……

ヴェーラ

花なんてどこにでも咲いてんじゃん
んなことよりも、あたしも飽きてきちゃったし、そろそろ大樹林の主ってやつと戦いたいんだけど

リン

な、なにか、この花、か、花粉がすごくて…………さ、さっきから鼻が……ふぁ、ふぁー……

メティ

だ、だめよ!
こんなところでくしゃみなんてしたら!

リン

…………うん、ちゃ、ちゃんと収まったから

メティ

ふぅ……ジャングルが燃えたら洒落にならないわよ

リン

……っくしょん!

ボッ!

メティ

全然、収まってないわ!

リン

くしゅん!

ボッ!

ヴェーラ

あちゃー、2連鎖

リン

くしゅん!

ボッ!

メティ

さ、3連鎖……も、もうだめね

リン

くしゅん!

ボッ!

ヴェーラ

まだまだっ!

リン

ふぁーーーーくしゅんっ!!

ボッ!

ヴェーラ

あっはっはっは!
ずいぶん溜めたね

メティ

……連鎖はこれで終わりかしら?

リン

ふぅ…………も、もう大丈夫だから

メティ

大丈夫じゃないわよ!
見なさい、周りを!

リン

も、燃えてますね、あは、は…………

ヴェーラ

さっすがに燃え広がると逃げらんないから、ふたりとも!
今のうちに逃げるかんね!

リン

はい!

メティ

まぁ、ここまでハプニングが起こるといい数字が取れること間違いなしね

メティ

おーほっほっごふぉ、ぼふぉ………け、煙が

ヴェーラ

メティ!
いつまでも笑ってないで、さっさと逃げろって! 真っ黒焦げになっても知らないよ!

メティ

そ、そうね、早く逃げないと




ナレーション

こうしてヴェーラ探険隊は、スタッフ含めて、全員が走り続け、途中、文字通りの火消しに行った大樹林の主の目を盗み、飛行

ナレーション

撮影初日に登った山へと辿りついた…………




ヴェーラ

あんだけ大きかったジャングルも、本気で逃げれば大したことないわねー

メティ

まだ燃えてるわ…………大樹林の主も必死で翼で扇いでるわね……

リン

ご、ごめんなさい

ヴェーラ

だいじょぶだいじょぶ、リンが気にすることじゃないって
それに、大樹林の主が翼で扇ぐせいで燃え広がってるだけだし

リン

うぅぅ……で、でも…………

メティ

リンさん

リン

な、なに?

メティ

最高の画が取れたわ!
高視聴率間違いなしよっ!

リン

本当に、ごめんなさい




ナレーション

そして、冒険は終わりを告げた

ナレーション

ヴェーラ探険記、次回を最終回を見逃すな!




リン

改めまして、申し訳ありませんでしたっ!

メティ

お宝どころの騒ぎじゃなかったけど、面白かったわ

ヴェーラ

途中で帰っちゃったからあのあとどーなったかしんないけど、もしかして、大樹林の主が焼け野原の主になってるかもね

リン

も、もしそうなってたら………
か、隠し財宝が二度と見つからないってことだよね……

ヴェーラ

ま、気にしなくていいんじゃない?
あれだけ歩き回ってなかったんだし

メティ

名残惜しいけど、諦めるしかなさそうね……

ヴェーラ

それじゃ、ドキドキヴェーラ探険記!
第4回をお楽しみにー!!

ヴェーラ

んじゃね~!!

番組終了

楽屋
『完全燃焼』

ヴェーラ

いんやー、宝は残念だったけどさぁ、あんだけ燃えたらさすがにゾクゾクしちゃうね

メティ

次回こそ、見つけたいわね、お宝……

リン

あのね、ヴェーラちゃん、メティちゃん

ヴェーラ

ん、どったの?

リン

これ、お詫びっていったらなんだけど……古代文明の宝の在り処を記した海図

リン

無人島……にあるみたいなんだけど……どうかな?

メティ

それいいわね
次回はそこで決定よ

ヴェーラ

よーーっし、最終回でお宝見つけて完全燃焼だーーっ!

メティ

あら、今回も完全に燃焼してたわよ

リン

うぅ、ごめんなさい

ヴェーラ

海賊の掟、その2っ!!

ヴェーラ

迷うな! 悩むな! 立ち止まるな!
行けばわかるさ、何事もーーーーっ!!!

メティ

お宝発見、冒険バラエティ!
ヴェーラのどきどき冒険記!

メティ

視聴者のみなさん、ごきげんよう
わたくし、当番組の司会者を担当しているメティ=エリファスです

ヴェーラ

世界中の海を遥々越えて、いずれ歴史に名を残す女海賊っ!
ヴェーラ=M=デーンとはあたしのことよーーーーーっ!!

ドンッ!

ヴェーラ

だから、なんなのこの音?

メティ

前回に引き続いてハイテンションでお送りするヴェーラのどきどき冒険記

メティ

この番組は毎回ゲストを引き連れ、ヴェーラ隊長とともにこの世界の秘境に隠されたお宝を探し求める冒険バラエティよ

メティ

さて、今回も既に収録を終えたわけだけど、どうだったかしら?

ヴェーラ

んー、まぁ今回の秘境が砂漠だったからね、やっぱ暑かったわ~

メティ

………海生の魔物のくせに、おかしいわよ、貴女
砂漠で元気なスキュラって………もう新種の生物よ

ヴェーラ

あはははっ!
砂界に比べたら、あんなのたいしたことないねっ!

メティ

貴女、存在からして無茶苦茶だわ………

ヴェーラ

今更なに言ってんのよ
それより、早いとこキューテ姉呼ばないと番組進まないって

メティ

今、さらっとゲストの名前言ったわね

ヴェーラ

別にどうだっていいでしょ?
それより、妙な期待させてキューテ姉が出てきたときの方ががっかりするんじゃない?

メティ

まぁ、そうね…………でも、世の中にはお約束というものがあって―――

ヴェーラ

はいはい、それじゃ、キューテ姉の登場よ、どうぞ!

パチパチパチ

キューテ

…………こんにちは、キューテ=オトカネです

ヴェーラ

あれ~、キューテ姉どうしたの?
テンション低いじゃん

キューテ

気分が沈むのも当たり前です
視聴率が下がると紹介されながら、ゲストに呼ばれたんですから

キューテ

それに、ロケの時だって………
はぁ、もういろいろと叱り付ける気力もありません

メティ

あら、わたくしたち、何か叱られるようなことしたかしら?

ヴェーラ

いんや、まったく心当たりがないね

キューテ

わたしがどんな目に合わされたのかも覚えてないんですか!

ヴェーラ

覚えてるけどさ~、まぁ、こっちとしてもキューテ姉に言いたいこともあるわけだし、おあいこでしょ?

メティ

そうよ、わたくしなんて、悔しさのあまり夜も眠れなかったわっ!

キューテ

なに言ってるんですか!
だいたい、あんな蛮行を平然と行おうとするなんて、モラルはどこに言ったんですか!!

ヴェーラ

………怒る気力あるんじゃん

キューテ

ちゃんと聞いてるんですか!?
だいたいですね―――

メティ

それじゃ、VTRスタート!



VTRスタート

メティ

ただいまから視聴者のみなさまにお見せするのは、この秘境……
果てしなく続く砂漠で出会った神秘の生物!

メティ

それがこちらです

ヴェーラ

砂漠来たわよーーーーーーーっ!
どっせーーーーーーーいっ!!

メティ

なんということでしょう!
海生の魔物、スキュラのハーフが砂漠ではしゃぎ回っています

ヴェーラ

おーーーーい、メティ!
なに、もうカメラ回してんのっ!?
ちょい気が早いんじゃない?

メティ

素晴らしい映像だわ、これで………
ふふっ、おーほっほっほっほっ、ごふぉ!

メティ

げほぉ!
うぅ、す、砂が……けほぉ……で、でもこれは魔物の常識を覆す映像だわ

ヴェーラ

あたしが言うのもなんだけど、あんた、なにひとりで遊んでんの?

メティ

いいえ、ただ貴女の規格外な存在感に驚きを隠せないだけよ

ヴェーラ

ふーん、まぁ、どうでもいいけどさ

メティ

それより、貴女………
体調とか大丈夫なのかしら?

ヴェーラ

だいじょぶだいじょぶ、砂界で修行したあたしからすればこんなの砂浜みたいなもんよ!

メティ

………もういっそ、ここを貴女のプライベートビーチにしたらどうかしら?

ヴェーラ

水平線が見えないビーチはビーチとは呼ばないわ

メティ

見えても地平線だもの………
ところで、そろそろしゃべりなさい、キューテさん

キューテ

しゃべれって言われても………
あの、ここはどこなんですか?

ヴェーラ

さっきから何回も言ってじゃん、ここは砂漠だって………
もしかして、キューテ姉、まだ寝ぼけてんの?

キューテ

いっそこのまま夢だったらどんなに幸せか………

ヴェーラ

やっぱ、寝ぼけてるね~
まぁ、睡眠薬飲ませて連れてきたから仕方ないか

キューテ

し、仕方ないって!
睡眠薬を作らされて、まさか、そのまま飲まされるなんて………
あなたは本当に何を考えるんですか!?

ヴェーラ

ふぇ?
あたしが自分で飲むなんて一度でも言った?

キューテ

ヴェーラちゃんが深い眠りに落ちる薬が欲しいなんて………たしかに疑うべきでした

ヴェーラ

でしょ?

キューテ

そこまで開き直られるのも、腹が立ちますが………
今回はわたしにも落ち度があります

キューテ

薬師としてそこを騙されるのは問題がありますからね……

キューテ

わかりました、今回はヴェーラちゃんのお目付け役として同行します

ヴェーラ

隊長であるこのあたしにお目付け役がつくっていうのは、なんか納得いかない

メティ

別にいいでしょう
そんなことよりも、ヴェーラさん………
どうしてキューテさんを呼んだのかしら?

ヴェーラ

なんでって、今回はこの砂漠のどこかにある王家の隠し財宝を探すのよね?

メティ

そうよ、何でもその墓の中に宝があるらしいわ

ヴェーラ

ふふんっ、だったらキューテ姉に頼んで空から探してもらった方が楽じゃん

メティ

貴女、何言っているの?
わたくしも飛べるわよ

ヴェーラ

…………

キューテ

…………

ヴェーラ

キューテ姉、お疲れさん!
あと、薬盛ってごめん、んじゃね

キューテ

ヴェーラちゃん!
そこに座りなさい! 正座です、正座っ!!
足を畳みなさいっ!

ヴェーラ

正座って、ここあっつい砂漠の上だよ

キューテ

あなたなら大丈夫です!
そんなことより、あなたはどうしていつも無鉄砲なんですか!?

ヴェーラ

んー、遺伝と育ち?

キューテ

……わたしもそこは否定できませんが―――

メティ

まぁ、否定できないわよね

ヴェーラ

あんさ、キューテ姉…………
あたしがすごいからって、いくらなんでも砂漠の上にじっと座んのは熱い!

キューテ

ヴェーラちゃんには、いい薬になるはずです

メティ

ふふふっ、バカにつける薬ってことかしら?

キューテ

メティさんも、何を笑っているんですか!?
あなたも同罪なんですから、ヴェーラちゃんとここに正座しなさい

メティ

嫌よ、どうして、わたくしが

キューテ

では、ヴェーラちゃんとふたりっきりで砂漠を闊歩してください、わたしは帰ります

メティ

う……ヴェーラさんの制御なんて、わたくしだけできないわ

ヴェーラ

あはははははっ!
この根性焼き、バカにつける薬なんでしょ、メティ?

メティ

『バカって言った方がバカ』って、まさにその通りになったわね





メティ

さて、お説教も終わったところで、ようやく探索開始ね

キューテ

上空から探しますか?

ヴェーラ

ん~、最初は歩きでいいんじゃないの?
手がかりとか転がってるかもしんないし

キューテ

正座させといてなんですが………
ヴェーラちゃん、本当に身体の方は大丈夫?

ヴェーラ

だいじょぶだいじょぶ!
鍛え方が違うし、なんかやばそうだったらキューテ姉の薬でなんとかなるっしょ

キューテ

………材料、持ってきていると思いますか?

ヴェーラ

ふぇ?

メティ

貴女、キューテさんを連れきたとき、道具とか持ってきたのかしら?

ヴェーラ

いんや何も
着の身着のまま連れてきただけだしね

メティ

干からびても知らないわよ!

ヴェーラ

いけるいける、あたしが砂漠ごときで倒れるわけないじゃん
それにほら、あそこにオアシスがあるし

メティ

え? あら、本当ね………
ふふっ、ちょうどいい、どうせ当てもなく彷徨うだけなんだもの、あそこを目指せばいいわ

ヴェーラ

なんか、手がかりもあるかもしんないしね

キューテ

…………一生辿り着かないような気がしますが





ナレーション

オアシスを目指して、歩き始めたヴェーラ探検隊……しかし、彼らに不可解な現象が襲う!





ヴェーラ

全然、着かない

メティ

おかしいわね………見えているのに、全然着かないわ

キューテ

だから、あれは逃げ水と言って―――

ヴェーラ

よぅし、ちょっと走って確認してくるわ!

ヴェーラ

ふっふっふっ、よっしゃーーー!
あたしが一番乗りーーーっ!

スタタタタ

メティ

あっ!
ちょっと待ちなさい!

キューテ

これが本当の向こう見ずですね………





ヴェーラ

なるほどね、これは絶対着かないわね

メティ

………まるで、水が逃げるようだわ

キューテ

はぁ、だからこれが逃げ水という現象で、蜃気楼の一種なんです

ヴェーラ

あはははっ、そういえば、砂界でもそういうこともあったわ

メティ

笑いごとじゃないわよっ!
体力を無駄に使ったじゃないっ!

ヴェーラ

こんなん全然使ったうちに入んないっしょ?

キューテ

これじゃあ、いつになるかわかりませんね………
わたしが上空から水辺を探してきます

メティ

わたくしもそうするわ……
ヴェーラさん、ちょっと待ってなさい

ヴェーラ

あっ! ちょい、あたしも連れてけーーーっ!

ヴェーラ

部下のくせに隊長置いていくなんて…………これが下っ端どもなら、ただじゃ済まさないんだけど

ヴェーラ

あーあ、砂漠の主とか怪物とか出てこないかなぁ………あぁ、もうっ!
暇、暇、暇ーーーーーっ!

ヴェーラ

って、あれ?
もう戻ってきた………ふたりとも、なんか早くない!?
もしかしてオアシスでもあった?

メティ

オアシスはなかったわ……
うふふっ、でも、別のものが見つかったわよ!

ヴェーラ

お、怪物が見つかったとか!?
ふふふっ、しゃーない、あたしが相手してやんよ!

メティ

違うわよっ!
わたくしたちの探してるものよっ!

ヴェーラ

探してるもの、オアシス?

メティ

王家の墓でしょう!!

ヴェーラ

こんな早く、あんたの見間違いとかじゃないの?

メティ

あったのよ、それがっ!

ヴェーラ

メティ、暑さで頭とかやられない?

メティ

やられてないわよっ!

キューテ

まさか、こうもあっさりと見つかるなんて……

ヴェーラ

よぉしっ!!
そうと決まれば、キューテ姉、あたしを抱えて飛んでって!!

キューテ

………あんまり、暴れないでくださいね?

ヴェーラ

だいじょぶだってっ!
あたしが落ちて死んだことあった!?

メティ

死んでたらここにいないじゃない
………っていうか、落ちたことはあるのね

キューテ

あはは……子どもの頃に、何度も………

ヴェーラ

一回、キューテ姉に落とされたあと、探しに来てくれたキューテ姉のお母様に落とされたこともあったからね!

メティ

さすがは、親子でスピード狂だわ

キューテ

もう落としませんから………それじゃ、行きますっ!

パサッ

ヴェーラ

ふふんっ、空からの眺めもなかなかのものね

メティ

一面砂漠なのに、何がいいのかしら……

ヴェーラ

で、その墓ってどこにあんの?

キューテ

あそこですっ!

ヴェーラ

あ、四角錐ってやつね!
キューテ姉、もっと急いでっ!!

キューテ

あ、だめ、暴れないで、ヴェーラちゃん、あんまり、暴れると、落とし―――

メティ

あっ、落ちた!
………おっ、この高さから普通に着地したわね………
あら、走っていったわ……

キューテ

三つ子の魂百までとは、よく言ったものです……

メティ

それより、早く追いかけるわよ!
宝を独り占めなんてさせられないわっ!





ヴェーラ

よぉーしっ!
さっそく、墓荒らしよーーーーっ!

メティ

おーほっほっほ!
出てきたお宝は全て売りさばいてやるわよっ!

キューテ

こらヴェーラちゃん、メティさん!
やめなさいっ!!

ヴェーラ

今からってときに、なに?
キューテ姉、どしたの?

キューテ

『どしたの』ではありませんっ!
ふたりともそこに正座しなさい、正座っ!

キューテ

いいですか、歴史的価値があるものに対して、墓荒らしとはなんですかっ!

キューテ

宝物もここに眠るからこそ、真の意味をなすんですっ!
わかってるんですかっ!





ナレーション

こうして、冒険は終わりを告げた

ナレーション

ヴェーラ探険記、次回を見逃すな





メティ

あのとき、キューテさんさえいなければ………
あぁっ! 悔しいわ!!

キューテ

………まだ、お説教が足りなかったようですね

ヴェーラ

でも、まぁ、宝は見つけ損なったけど、墓は見つかったし番組的にいいんじゃないの?

メティ

いいわけないでしょう!!
わたくし、一生悔やむわっ!!

キューテ

………守銭奴につける薬はなさそうですね

ヴェーラ

それじゃ、ドキドキヴェーラ探険記!
第3回をお楽しみにー!!

ヴェーラ

んじゃね~!!

番組終了

楽屋
「呪い」

メティ

どんなお宝が眠っていたのか……
それが金貨何枚になったか……悔しくて眠れないわっ!

ヴェーラ

あんたも相当執念深いやつね

キューテ

はぁ、まだ言ってたんですか…………

キューテ

いいですか、メティさん
墓荒らしには呪いが振りかかるって話もあるんですよ

メティ

それがどうしたのかしら!?
呪いが怖くて悪魔なんてやっていれられないわ!

メティ

おーほっほっほっ! おーほっほっほっ!

ヴェーラ

海賊の掟、その1っ!!

ヴェーラ

宝が欲しけりゃ探せぇーーーーっ!
この世の全てをーーーーっ!!

メティ

お宝発見、冒険バラエティ!
ヴェーラのどきどき冒険記!

メティ

ふふっ、視聴者のみなさん、ごきげんよう
お馴染み売れっ子司会者メティ=エリファスです

ヴェーラ

いずれ七海しちかいを制覇する女海賊!
ヴェーラ=M=デーンとはあたしのことよーーーーっ!!


ドンッ!

ヴェーラ

……なに、この効果音?

メティ

さて、この番組は毎回ゲストとお呼びし、ヴェーラ隊長とともにこの世界の秘境に隠されたお宝を探し求める冒険バラエティーよ!

メティ

第1回の収録を終えているわけだけど、どうだったかしら?

ヴェーラ

いやー、もうなんて言っても内容が濃いからねー
もう、『すごい』の一言に尽きるんじゃないの?

メティ

ふふっ、確かにそうね、衝撃の連続で興奮間違いなしだわっ!

ヴェーラ

このあたしでさえ一時はどうなることかと思ったからね!
最後はもう、血湧き肉躍る熱い戦いがーーー…………

メティ

さあ、今回のぎせ……ゲストをお呼びするわ! この方よ、どうぞ!

ミリータ

はぁ……どうも、ミリータ=H=アスクレピオです……今回の犠牲者です

ヴェーラ

んー?
犠牲者ってどういうこと、ミリータ?
あたしら、尊い犠牲とか何一つ出してないじゃん!

メティ

そうよ、貴女もあの秘境を乗り越えた仲間じゃない

ミリータ

収録の時も言わせて貰ったけど……わたし、『旅行番組の収録』って聞いてたのに

ヴェーラ

冒険バラエティーだから、旅番組みたいなもんでしょ!

メティ

カテゴリー的には一緒よ

ミリータ

そのカテゴリー広すぎるよ!

ミリータ

どこかもわからない秘境に連れていかれて、そのまま宝探しって……もうそれって旅行じゃないよね!

ヴェーラ

なにさ、ミリータも楽しんでたじゃんか!!
あれは嘘だったの!?

ミリータ

楽しくないよ!
………それにあんな酷い目に合わされるなんて

ヴェーラ

…………酷い目?
そんなことあったっけ?

メティ

知らないわね、記憶にないもの

ミリータ

もういいよ、だったら、VTRを見て思い出して!

ヴェーラ

そんなの見たところで編集でカットされてんじゃないの?

ミリータ

カットしたら、放送できるところないよ……

メティ

わかったわよ
それじゃ、VTRスタート!



VTRスタート

ヴェーラ

ふははははっ!!
ヴェーラ=M=デーンが秘境に来たああああああっ!!

メティ

記念すべき第1回の秘境は、なんと…………山!

ヴェーラ

いや~、山って聞いたから『どんな断崖絶壁?』って思って来てみれば、もう、ここってばあんま高くないし、木は脆そうだし

メティ

まぁ、今回の目的はあくまでお宝よ!
山なんて登ったところでびた一文儲からないわ

ヴェーラ

あたしは何でもいいんだけど、お宝って聞いて黙ってる海賊はこの世にはいないわ!

メティ

ハプニングさえ起これば視聴率だってこっちのものよ……
ふっ、ふふっ、いいじゃない…冒険、最高じゃない!

ヴェーラ

おお! 分かってるねぇ! 良いじゃん、良いじゃん! その勢いで、お宝ゲットだよ!!

メティ

あいにく、宝そのものに興味はないの!
わたくしが欲しているのはあくまでお金!
金銀財宝なんて、見つけ次第、即刻売り飛ばすわ

ヴェーラ

ばっ! お宝を売ってどうすんのさ!
手に入れたお宝は、独り占めして眺めるに限る!!

メティ

違うわよ!
お宝は売って、手に入れたお金を独り占めして眺めるに限るわ!!

ミリータ

あの~盛り上がってるとこ悪いんだけど
ヴェーラちゃん、わたしにこの状況を詳しく教えてくれないかな?

ヴェーラ

んあっ! 今回のゲストを紹介すんの忘れてたっ!
ほら、カメラに向かって挨拶して!

ミリータ

え?
うん……ミリータです……旅行番組の収録に呼ばれたんだけど

ミリータ

ほんとにこの辺りに観光スポットって……あるの?

ヴェーラ

ふふんっ……

ヴェーラ

ないっ!

ミリータ

……え?

ヴェーラ

足を踏み入れたことがほとんどないから秘境なんだってっば!
観光地なんてあるわけないじゃん!

ミリータ

えーーーーっ!!

メティ

ヴェーラさん……
もしかして貴女、何も言ってないのかしら?

ヴェーラ

ちゃんと伝えたって!
そりゃちょっとは話を盛ったかもしんないけどさー

ミリータ

ちょっとどころじゃないよぉ……
ヴェーラちゃん、たしか美味しい食事が出るって言ってたよ

ヴェーラ

イノシシならたくさんいるんじゃない?

ミリータ

なんで自給自足なの…………

ヴェーラ

ちっちっち
探険すんのに、用意周到とかなんか違うじゃん!

ミリータ

じゃ、じゃあ、楽しいバケーションは?

メティ

楽しいロケーションが待ってるわ

ミリータ

うぅ……わたしは楽しくないよ

ヴェーラ

まぁ、ここは一つ、幼馴染のよしみってことで着いて来てくれるよね?

ミリータ

その言葉に騙されて、気がつけば『副船長』って呼ばれてるんだけど……

ヴェーラ

そんな名誉までもらえるなんて、いい幼馴染を持ってるよね~、ミリータは

ミリータ

はぁ、もういいよ…………
どうせ、ここまで来たらいくしかないもんね……

ヴェーラ

よぉし、そうと決まればさっそく探険開始っ!!

メティ

おーーーーーー!!

ヴェーラ

…………

ミリータ

…………あはは

メティ

やりなさいよ!





ナレーション

こうして、ヴェーラ率いる探検隊は、木々の生い茂る山の深みに入っていくのだった i





ミリータ

ところで、ヴェーラちゃん……
今回のお宝ってどんなものなの?

ヴェーラ

どんなものなの、メティ?

メティ

……わたくしに丸投げするのやめてくださる?

ヴェーラ

そりゃ聞いてないから、仕方ないってもんでしょ?

メティ

………何でもこの山のどこかに山賊の宝が眠っているらしいわよ

ミリータ

へぇ、山賊の宝か…………
それってどこにあるの?

メティ

知らないわ

ミリータ

へ?

メティ

知っていたら一人で来てるわよ、山分けなんて真っ平だもの

ミリータ

……じゃ、じゃあ、わたしたちって、今どこに向かって歩いてるの?

メティ

知らないわよ

ヴェーラ

ん~、本当にあるんだったら、探せば見つかるっしょ!

ミリータ

さ、探すって言ったってどこを探すの?

ヴェーラ

山!

ミリータ

大雑把過ぎるよ!
ここがどれだけ大きな山か分かってる!?

ヴェーラ

ん~~~、だって海ほどじゃないし!
山賊も手がかりなしで、宝を隠すなんてありえないからね
あたしの洞察力でカバーすれば余裕だって!

ミリータ

…………うぅ、どうしていつもこうなるのかなぁ

メティ

元気出しなさいよ
ゲストがこんな状態だと視聴率に関わるわ

ミリータ

……メティさんが言うと、『現金出しなさいよ』って聞こえる

ヴェーラ

うん、あたしにもそう聞こえた

メティ

…………不思議ね、わたくしもなんだかそう言ったような気がするわ

ミリータ

いや、否定しようよ

ヴェーラ

あはははっ!
日ごろの行いってやつね!

メティ

それを貴女に言われるのだけは我慢できないわ

ミリータ

……ん?
……あれ?

ヴェーラ

ん、ミリータ、何か見つけた?

ミリータ

うん、あそこに洞窟があるよ

ヴェーラ

おお! いかにもって感じの洞窟がじゃんか!
ふふっ、強敵の出現、行方不明の隊員、いいじゃん! いいじゃん!

メティ

洞窟……ふふっ、宝と視聴率の匂いがぷんぷんするわね
…………これは、行かない手はないわ

ミリータ

まぁ、闇雲に歩き続けるよりかはずっといいかな……

ヴェーラ

そうと決まれば、さっそく、突撃ぃ!!

ミリータ

あ、待ってよ、ヴェーラちゃん

メティ

宝は三等分……いえ、番組が管理するから、まずはわたくしが預かるわ!
待ちなさい!





ナレーション

勢い勇んで走り出す探検隊を……恐ろしき巨大生物の魔の手が襲う!





ミリータ

ここの洞窟…………湿気臭いだけで何もないね

ヴェーラ

山の主とかいないかな~?
そろそろ出てきてくんないと、見てる方も出てる方も飽きちゃうんだよね~

メティ

そうね、そろそろアクションシーンでも撮れないと、数字に影響するわ

ヴェーラ

ミリータもそろそろ戦いたくなってきたんじゃない?

ミリータ

あはは、わたしはまだ遠慮したいかな

ヴェーラ

とかいいつつも、狩りになると目の色変わっちゃうからね~、ミリータは

メティ

……ん!?
な、なにかしら、あれは!

しゃー!!

ヴェーラ

おお!
蛇、それもかなりおっきいじゃん!
ふふん、初戦にしてはちょうどいいかな!!

しゃー………?

メティ

ん?
待って、様子がおかしいわ……?

ミリータ

……?

しゃ……

ヴェーラ

……ミリータ見て固まってんじゃん、大蛇

ミリータ

え、わたしじゃないよ、絶対、ヴェーラちゃんだって……ね?

しゃーしゃー

ミリータ

ほら、大蛇さんだって、頷いているよ?

ヴェーラ

どっからどう見ても、ミリータに凄いビビッてるわよ…………
なんか、あたしに挨拶する舎弟を見てるみたい

メティ

洞窟の中の大蛇、ミリータを知る…………ってところかしら?





ナレーション

探険隊を待っていたのは巨大な大蛇!
しかし、ミリータ隊員に臆した大蛇はペコペコと頭を下げる始末

ナレーション

しかし、洞窟を後にした一行に次なる魔の手が潜んでいた





メティ

行けども行けども木々ばかり、本当に宝なんてあるのかしら?

ミリータ

それはわたしのセリフだよ

ヴェーラ

さてと、どうしたもんかな~、そろそろやっちゃってもいいかな~!
あ~、うずうずするわ

ミリータ

………ヴェーラちゃん、どうしたの?

ヴェーラ

さっきからちょっち気になることがあるのよ

ミリータ

……っ!
なるほど、気付かなかったよ

ヴェーラ

ミリータもようやく気付いた?
ぞろぞろと集まってきたみたいだし、そろそろかな~?

メティ

あら、何の話かしら?
お金に関係するのなら、話しなさい

ヴェーラ

お腹をすかせたイノシシに囲われたっぽいんだけど、まぁ、あたしらからすれば、夕飯が届いたって感じ?

ミリータ

やっぱり、狩りってなると腕がなるよね

ヴェーラ

メティもどう?

メティ

遠慮するわ
わたくし、お金のため以外で体を張るのは嫌よ

ヴェーラ

手伝わないと肉が食べられないって言ったら?

メティ

食べないわよ!
わたくしはお金を見ているだけでお腹が膨れるわ!

ミリータ

あはは……大丈夫だよ、狩ったら振舞うから

メティ

あら、わたくしからお金をとる気かしら?

ミリータ

お金はいらないよ……見つけた宝は三等分、だよね?

メティ

…………そうね、わたくしの分け前は肉屋に売るわ

ミリータ

そこは食べようよ!

ヴェーラ

おっ!
ふふん、来たみたいね!!

ミリータ

よし、行くよ、ヴェーラちゃん!

ヴェーラ

あははは、狩ってやんよ!
夕飯ども、掛かっておいでっ!!





ナレーション

お腹を空かしたイノシシたちの来襲を、抜群のコンビネーションで軽々と退けたヴェーラ探検隊

ナレーション

こうして、探検隊は夕食の食材が手に入れた





ミリータ

5頭か……うん、大きいイノシシだし、3人だと十分過ぎるかな

ヴェーラ

さぁて、ミリータ、調理は面倒だからお願いね~

ミリータ

はいはい……あれ?
メティさん、調理の風景は撮らないの?

メティ

ええ、こういう映像をお茶の間に流すと怒られるのよ、カットするわ





ナレーション

映像にグロテスクな表現が含まれますので、調理風景はカットさせていただきました





ミリータ

というわけで、切り分けたけど……うん!
なかなかおいしそうだね

ヴェーラ

それじゃ、いただきま~す……もぐ………んっ!!

ヴェーラ

おいしいじゃん、これっ!
さすが、秘境の肉、引き締まってていい感じね~!

ミリータ

本当だ!
脂身が少なくて、ヘルシーでおいしい!

メティ

秘境のイノシシの肉、ヘルシーな味わいにダイエット中でも美味しくいただけます…………
金になるわ!

ミリータ

これは……もぐ……癖になる味わい……もぐ……今、ちょっとだけ来てよかったと思えたよ

ヴェーラ

いやぁ、これならまだまだ食べれるね……もぐもぐ

メティ

全部食べる必要はないわよ!
残った分は肉屋に買い取ってもらうわ!





ナレーション

1時間後





メティ

…………5頭いたわよね?
それも大きいのが

ヴェーラ

いなかったんじゃない?

ミリータ

あはは……いたのかな?

メティ

いたのよ、そこに!
食べ過ぎよ、貴女たち!

ミリータ

あまりにおいしくて……つい

ヴェーラ

うんうん
それに、肉屋に持ってったところで、その頃には腐ってるって

メティ

くっ……冷静に考えればそうね

ミリータ

ところで、もうそろそろ暗くなってきたけど、今日はどこに泊まるの?

メティ

…………

ヴェーラ

…………

メティ

…………

ヴェーラ

…………

ミリータ

……え?

ヴェーラ

一応、聞いとくけど、この辺りに旅館があると思ってんの?

ミリータ

さすがに、それは高望みかなぁとは思ってるんだけど、せめて、テントぐらいは……

メティ

貴女、持ってるかしら?

ヴェーラ

見て分かるっしょ?
あたし、手ぶら足ぶらだよ?
てか、あたし最初に言ったよね、用意周到はなんか違うって

ミリータ

てことは、毛布も……?

ヴェーラ

メティの体でなんとかならない?

メティ

金貨次第でなんとかしてあげてもいいわよ

ヴェーラ

じゃ、仕方ないね
さあて、明日も早いし、あたし先に寝るから

ミリータ

地面に寝転がらないでよ、ヴェーラちゃん……せめて、さっきの洞窟に!

ヴェーラ

場所忘れた……おやすみー

メティ

素泊まりは安くつくから好きよ

ミリータ

さすがにこれは、素泊まり過ぎるんじゃないかな……うぅ





ナレーション

こうして、探検隊たちは眠りの中に落ちていく……だが、彼らの行く先に安息はない!





ヴェーラ

ハッ!
…………来た!!

メティ

……んっ!?
ハプニング発生なの!?
視聴率は取れそうかしら!?

ミリータ

え、ちょっと、『来た』って何が?

ヴェーラ

視聴率はわかんないけど
ふふんっ、この殺気、こいつは中々の大物みたいね!

メティ

ふふっ、それならできるだけ時間かけて戦いなさい!
その方が番組が盛り上がるわ

ヴェーラ

おおっ!
山の主じゃんかっ!
これは遊ぶにはうってつけだわ!

グルルル! バオーー!!

ミリータ

す、すごい形相……なんか、すごく怒ってるよね?

ヴェーラ

そんなことどうでもいいわ!
さあて、やってやるわよ!!
ハァァッ!!

グルルル! バオーー!!

ヴェーラ

おっと!
くーっ、キレのいい攻撃ねっ!
モロに喰らっちゃうと足の一本持ってかれそうっ!

ミリータ

だ、大丈夫なの、ヴェーラちゃん!?

ヴェーラ

あたしがこんな鈍い攻撃に当たるわけじゃん!
ふふっ、楽しくなってきたぁぁっ!!

メティ

すごい画ね……
だけど、暗いし速いしでカメラじゃ捉えきれないわね

ミリータ

えっ?
じゃ、どうするの?

メティ

もうすぐ朝になりそうだし、それまで戦ってもらえれば問題ないわ

ヴェーラ

だっーーーーー!!
おっ!? ふふん、見た目通り、防御は高いみたいねっ!
ま、あんたが崩れるまで蹴り続けてやんよ!!

ミリータ

この感じだと本当に朝まで続きそうだね……

メティ

そうね、カメラの撮影時間も無駄にできないし、しばしの待機よ





ナレーション

こうしてヴェーラ隊長と山の主との熾烈な戦いは朝日が昇るまで続けられた、果たして勝敗は……





グルルゥ…… バオォ……

ヴェーラ

なに、もうへばってんの!?
じゃ、止め刺しちゃうかんね!!

ハァッ!!

バオォッー!!





ナレーション

体力の限界に達した山の主に、ヴェーラ隊長は止めを刺すため、一気に木々を駆け上り、上空からの一撃を放つ

ナレーション

しかし、その瞬間、木々に止まっていた不気味なこうもりの大群が一斉に飛び立った





ミリータ

……ふぇ?

ミリータ

きゃ…………きゃあああああああああ!!

ヴェーラ

や、やばっ!
メティ、木陰に隠れてっ!!

メティ

わかってるわ!





ナレーション

こうもりの大群がミリータ隊員の通過した途端、事件は起きた!

ナレーション)

我々探検隊を包むまばゆい光、そして、ミリータ隊員の叫び声……この2つが意味していることは!





ヴェーラ

あーあー、また、見事な石像ができたわね~
…………こうなりゃ、山の主も形無しだわ

ミリータ

また、やっちゃった……はぁ、どうしよ

ヴェーラ

はぁ………なんだかしらけたし、あたしは帰るわ

ミリータ

あ、待ってよ、ヴェーラちゃん……
わたしたちも帰ろうか、メティさん

メティ

わたくしは、まだ帰らないわ

ミリータ

えっ? どうして?

メティ

この表情……まるで、今すぐにでも動きだしそうなリアルな造形!

ミリータ

だって、さっきまで動いてたんだし……

メティ

おーほっほっほっほ!!
売れる、売れるわ!!
骨董屋に持っていけば、ふふっ、お金の匂いがぷんぷんするわ!!

ミリータ

あの……喜んでるところに水差すようで悪いんだけど、これ………どうやって持って帰るの?

メティ

…………ちらっ

ミリータ

……もうヴェーラちゃんなら先に行っちゃったよ

メティ

…………なら、ここを観光地化すればいいわ!
そうよ、これを名物に!!

ミリータ

えっと……誰が来るの?
こんな山奥の秘境に

メティ

…………

ミリータ

あはは…………

メティ

…………





ナレーション

こうして、一つの冒険は終わりを告げた…………
しかし、秘境が! 宝が! 我々を待っている!

ナレーション

ヴェーラ探険記、次回を見逃すな





ミリータ

……散々な旅だったね

ヴェーラ

次はもっとハラハラするような冒険がしたいわ~!
なんつーか、こう、血が滾るような冒険がさー!!

メティ

次こそ宝をゲットして、売り払ってやるわ!
必ずね!!

ミリータ

あはは……番組が始まったときと言ってること全然違うよね……

メティ

番組ってそういうものよ

ヴェーラ

それじゃ、ドキドキヴェーラ探険記!
第2回をお楽しみにー!!

ヴェーラ

んじゃね~!!

番組終了

楽屋
「ヴェーラの秘策」

メティ

結局のところ、何が悪かったのかしら

ヴェーラ

何がって何が?

メティ

お宝をゲットできなかったことよ!
決まってるでしょう!

ヴェーラ

むふふふふっ……あたしに秘策あり!!

メティ

何よ、秘策って

ヴェーラ

お宝探しに使えそうなゲストがいるんだよね~、ふふっ、まぁ、それが誰かはお楽しみ~

メティ

…………期待せずに待ってるわ