Story

山にキャンプに来ていた青年は、山頂で弁当を食べていた。
ゆで卵の殻を剥いていた青年、あっと手が滑り卵はころころ転がっていく。
慌てて追いかける青年。どこかで聞いた昔話みたいだなと、柄にもなく思っていたが、卵は止まらない。
ついには丘を転がり続け、近くにあった湖へとダイブイン!
膝をつき絶望に身を委ねる青年。そこまで卵が好きだったのだろうか。甚だ疑問である。
だがそんな若干気持ち悪い卵愛を見かねたのか、湖から神々しい女性が出現した。両手に卵を持って。
これはまさかと、斧がどうこうの話を思い浮かべる青年。
その期待を裏切らず、神々しい女性は口を開く。

「貴方が落としたのは金の卵ですか? 銀の卵ですか?」

紆余曲折を経て、青年は二つの卵を手に入れた。ゆで卵は食われた。
だがかなり大きい卵である。これは良いゆで卵が作れると、青年はほくほく顔。
早速とばかりに、家へと戻った青年は、お湯を沸かして卵をゆでる。
そこに戸惑いはいっさい存在しなかった。有精卵の可能性など、微塵も考えていなかった。
急速に温まる卵。垂れる涎、鳴るお腹。そしてその時がやってくる。
がたがたと音をたてて揺れ動く卵に、まさかとおののく青年。
卵に罅が入り、それは徐々に範囲を広げ、ついに爆発する!
お湯が一気に蒸発し、辺り一面煙に包まれる。
それが晴れた時、青年の目の前には一人の女の子の姿が!!
そんな光景を見ながらも、青年は努めて冷静に口を開く。

「体積がおかしいだろ!!」

残念。冷静ではなかったようだ。そんな青年を無視するように、女の子はひしっと腰に抱きつく。

「パパ~!」

びしりと固まる青年。あゝ、なんということでしょう。若い身空から子持ちにジョブチェンジ。
しかも良く見ると、女の子は一部分が人間じゃない。
さらには黒服の大人たちが不法侵入したあげく、青年を囲み始める。
本気で意味が分からない青年に、黒服たちは状況を説明する。

曰く、近年異世界との交流が活発になってきている。
最終的には共存を目指しているが、姿が姿なのでまだ公にできない。
そのテストケースとして、異世界の子どもをこちらで育てて、常識を教え込んでいる。
それが上手くいけば、世界に公表して、共存を実現させるというのだ。

なるほど。意味が分からなかった。突然そんなことを言われても青年は困るだけ。
しかし、一種の刷り込みか、すでに子どもは青年に懐いている。
もう無理に引き離すのは無理だと判断した黒服たちは、問題は起こさないようにだけ告げて去っていく。
問題を起こせば、それだけで処罰対象になると脅すことも忘れない姿には脱帽である。
まるで期待されていない態度に腹を立てる青年だが、期待されたらされたで困る。
しかし懐いている子が処罰されるとなると困るくらいには、青年にも心がある。食べようとしたのは脇に置いておくが。
こうなった以上、育ててやるしかない。ひとまず問題を起こさないくらいには、常識を教えなければならない。
後は誰かに見られないようにも気をつけなければならない。やることが多くて頭がパンクしそう。
果たして青年と女の子の関係は、どうなってしまうのか! 乞うご期待!!